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映画・演劇のレビュー

原田マハ『暗幕ゲルニカ』①

2016-12-27 01:02:01 | その他
また、絵画と画家を中心に据えた作品だ。キュレーターだった原田マハは近年このパターンで幾つもの傑作をものにしている。本の帯には「『楽園のカンヴァス』を凌ぐ壮大な美術ドラマ」(by大森望)とある。そうかぁ、これは美術ドラマなのか、と感心する。こういうシンプルなネーミングはいい。



今回はピカソである。彼がいかにしてゲルニカに至ったか。ピカソとドラの話に止まらない。戦争についてのお話。2001年、9・11で夫を失った主人公であるMoMAのキュレーター瑤子が「ピカソの戦争」展を企画する。アメリカはイランへの報復措置を開始する。スペイン内乱と、バグダッド空襲。ふたつの時代を往還しながら暗幕の中のゲルニカの謎に迫る



先日のMay『モノクローム』に続き、これもまたモノクロの世界に封じ込められた歴史の謎を描く。白と黒ではないし、色のない世界でもない。モノクロはもっと奥が深い。昔、小栗康平監督がデビュー作『泥の河』を作った時も、モノクロに拘った。小手先の技ではなく、確信犯的にそこに意味を持たせるのだ。この2作品もそこを大事にした。(モノクロで描かれた『ゲルニカ』にピカソが込めた想いは、この小説の根幹を為す)



さらには、1本の映画と1枚の絵画。共通項はある。そこを起点にして、歴史の中で封印されたはずのものを詳らかにしていく。そこから今、我々が何をするべきなのか、に迫る。ピカソや原節子という神話化された存在を描き、(『モノクローム』は必ずしもは原節子ではないけど)そこからここで今生きているひとりひとりが何とどう向き合っていくべきなのかに迫る。(ここまでで3回「迫るという言い方を使った!
それくらいにこの2作品は求心的な作品だったということだ)



昨日読んだ千早茜の『西洋菓子店プティ・フール』について、補足。あの小説の面白さは、ケーキが嗜好品であり、そんなものなくても生きていけるにもかかわらず、人はそれにこだわることで生きているという事実。そこからスタートしている。それは映画や絵画も同じ。



この『暗幕ゲルニカ』のスタートも、絵画によって何ができるか、という問いかけである。とっかかりとなる部分が面白い作品は、そこからだけからでも最後まで引っ張って行ける。それだけではなく、そこからはさまざまなドラマやテーマは派生するけど、そこにぶれがないと、世界はどんどん広がっていく。



実はまだこの小説を読み始めたばかりだ。だから、これからどうなるのか、わからない。でも、ここまで読んで(100ページほど。全体は400ページほどある)そんなことを思った。』①

また、絵画と画家を中心に据えた作品だ。キュレーターだった原田マハは近年このパターンで幾つもの傑作をものにしている。本の帯には「『楽園のカンヴァス』を凌ぐ壮大な美術ドラマ」(by大森望)とある。そうかぁ、これは美術ドラマなのか、と感心する。こういうシンプルなネーミングはいい。



今回はピカソである。彼がいかにしてゲルニカに至ったか。ピカソとドラの話に止まらない。戦争についてのお話。2001年、9・11で夫を失った主人公であるMoMAのキュレーター瑤子が「ピカソの戦争」展を企画する。アメリカはイランへの報復措置を開始する。スペイン内乱と、バグダッド空襲。ふたつの時代を往還しながら暗幕の中のゲルニカの謎に迫る



先日のMay『モノクローム』に続き、これもまたモノクロの世界に封じ込められた歴史の謎を描く。白と黒ではないし、色のない世界でもない。モノクロはもっと奥が深い。昔、小栗康平監督がデビュー作『泥の河』を作った時も、モノクロに拘った。小手先の技ではなく、確信犯的にそこに意味を持たせるのだ。この2作品もそこを大事にした。(モノクロで描かれた『ゲルニカ』にピカソが込めた想いは、この小説の根幹を為す)



さらには、1本の映画と1枚の絵画。共通項はある。そこを起点にして、歴史の中で封印されたはずのものを詳らかにしていく。そこから今、我々が何をするべきなのか、に迫る。ピカソや原節子という神話化された存在を描き、(『モノクローム』は必ずしもは原節子ではないけど)そこからここで今生きているひとりひとりが何とどう向き合っていくべきなのかに迫る。(ここまでで3回「迫るという言い方を使った!
それくらいにこの2作品は求心的な作品だったということだ)



昨日読んだ千早茜の『西洋菓子店プティ・フール』について、補足。あの小説の面白さは、ケーキが嗜好品であり、そんなものなくても生きていけるにもかかわらず、人はそれにこだわることで生きているという事実。そこからスタートしている。それは映画や絵画も同じ。



この『暗幕ゲルニカ』のスタートも、絵画によって何ができるか、という問いかけである。とっかかりとなる部分が面白い作品は、そこからだけからでも最後まで引っ張って行ける。それだけではなく、そこからはさまざまなドラマやテーマは派生するけど、そこにぶれがないと、世界はどんどん広がっていく。



実はまだこの小説を読み始めたばかりだ。だから、これからどうなるのか、わからない。でも、ここまで読んで(100ページほど。全体は400ページほどある)そんなことを思った。
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