先日『@サクラ』を読んでいるからこちらもさっそく読むことにした。もうネタバレだけど、そんなことは承知の上である。というか、既にサクラを読んでいるということを前提にして読むことが作者の今回の仕掛けであり、それが楽しい。これはそんな楽しみ方も可能な(それを踏まえての)小説なのである。
だけどこの順番でよかった。こちらは『@サクラ』に比べると緩い。スマホを使った作品というパッケージングがより全面に出るのは、『@サクラ』にあった紅いアザのような黒い話がないからだろう。かわいい小説の中にしっかり黒点を入れたあちらは神戸遥真の新境地を提示した。それと比べるとこれはジェンダーの問題に切り込んだ代表作『笹森くんのスカート』の先はいかない。ユナが女の子だと間違われるこという部分も軽く流している。
ただ合宿部の話や、声変わりに苦しむところとか、素直に受け入れられる。無理なく話が自然に流れていくのがいい。兄に対してのコンプレックスもさらりと描き説得力がある。ありきたりスレスレのところのリアリティはさすがだ。
今回の二作品を通して神戸遥真は明らかに成長している。この先きっと児童文学という枠から大きくはみ出す作品を作ってくれるはずだ。もちろん今まで通りの路線と並行して、ね。