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映画・演劇のレビュー

『インポッシブル』

2013-07-03 23:37:53 | 映画
スマトラの大地震による津波で、甚大な被害を受けたタイのプーケット島を舞台にした人間ドラマ。すさまじいスペクタクルシーンが描かれるが、もちろんこれはパニック映画ではない。ただ、津波のシーンは凄すぎて、あれを再現するのに、どれだけのお金と技術が必要だったかと思うと、なんだか映画って改めて凄いと思わされる。これだけの労力をつぎ込んで、この映画を作ろうとしたスタッフ、キャストの苦難は想像に難くない。使命感なくして、作れない。ただ、今の日本でこれを上映するのはちょっとまだ時期尚早ではないか、と言う気がする。リアル過ぎて目を覆いたくなるシーンが続出だ。

話は単純だ。休暇でここに来ていた5人家族が、津波に遭い、ばらばらになる。母(ナオミ・ワッツ)と長男は、流された。父(ユアン・マクレガー)と下の子どもたちは、命からがら助かった。父はなんとかして、妻と息子を捜し出そうとする。

最初は、流された2人のサバイバルが描かれる。この2人が見た現実が再現される。やがて、土地の住民に助けられて病院に収容される。そこまでのドキュメントが壮絶。その後、ようやく父の側の話へと、転じる。この2組が何とか再会し、タイを離れて、シンガポールの病院に向かうまでが描かれる。それだけ。話は実にシンプル。周辺の人たちの描写はあるけど、この家族から目を離さないし、それ以上のことは言わない。津波による被害、悲劇をあれもこれも描くことはできない。だから、ある特殊な事実をそこだけ捕えて見せることにした。こんなにもうまく生き延びた例は少ないだろう。だからこそ、この背後にはどうしようもない山のような悲惨な事例があることを、忘れてはならない。これは、めでたしめでたし、なんかではない。




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