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映画・演劇のレビュー

濱野京子『紅に輝く河』

2012-10-25 20:36:53 | その他
これが現在のところ、濱野京子さんの最新作となる。シリーズの第3作。今回も、大国に攻められ属国となった国を舞台にしてのラブストーリー。だが、最初からそうだったが、このシリーズで大事なことは、甘い恋愛物ではなく、女性の生き方の問題のほうが先行する。大好きな人と添い遂げられて幸せになりました、というような話には一切ならない。女だからこその困難が前面にでる。

 今回は1作目と同じように王女が主人公になる。彼女が今ある自分の境遇から脱していかなる人生を選ぶことになるのかがテーマだ。国政をいかに舵取るか、それがもうひとつのテーマで、これまでも3作ともそれぞれ別々のケースを提示した。飢饉から生じた内乱を描くのだが、それが従来の封建的なやり方を駆逐することとなる。

 ただ、お話の構造が少し複雑になりすぎて人間関係も前2作ほどにはわかりやすくない。もっとシンプルに整理してもこの話なら語れるのではないか。先の2作品でできたのに、今回だけ出来なかったのは、構成ミスであろう。前2作との関連がそこここで見えてくるのはファンにしてみれば、快感だろうが、それはただの読者サービスでしかない。同じ世界の別の場所での3つの話という関連で十分だ。

 神託により政治を行うことの是非ではなく、民衆の側にたった政治を行うこと、というあたりまえのことをこんなふうにさまざまなケースから見せていくという試みは実に興味深い。それだけに、その大状況と、主人公たちの恋物語という小状況、というか、事の大小とか、どちらが大事かとか、そんなことではなく、その両者の関連からドラマを組み立てることで、世界と個人の係わり合いをもっと明確に見せてもらいたい。この世界はどうなっているのか、どうなるべきなのか、その答えを見せてもらいたい。富の独占ではなく、民意による共同管理という1作目でのテーマのバリエーションだけなら、3作書く意味はなかった。その先が見たかったのに、少し残念な作品になった。


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