
『スパイ大作戦』がこのタイトルになった時は凄い違和感があったのに、今ではこちらのほうがしっくりくる。それくらいに馴染んでしまったし、本家であるTVシリーズなんかもう誰もイメージしない。トム・クルーズの最高ヒット作の第5弾。ハリウッドのヒットメイカーの看板シリーズは本人のイメージを限定してしまい、役者自身はあまりいい気分じゃない場合も多いのだが、彼のこのシリーズは別格。イーサン・ハントは戦い続けるトムそのもの。マンネリ化からこんなにも遠いのも、彼の努力のたまもの。どんどんエスカレートしていくアクションは、人間臭さを損なうはずなのに、このシリーズだけは別格。トム・クルーズの挑戦は、ただのスタントではない。生き様にすらつながるのだ。だから、感動する。
今回の冒頭で(あれが映画のクライマックスだと思っていたから、こんなアバンタイトルだったなんて、驚く。)いきなりポスターにもなっているジェット機の機体につかまり空を飛ぶシーンが登場する。CGではなく、自分で演じたということで話題になったあのシーンだ。しかし、ここが映画の根幹を為すシーンでは当然なく、映画自体はあくまでも地味なアクションの積み重ねと、スーパーアクションは中盤のカースタントに委ねる。そういう構成も見事だ。2時間11分緩急自在で、観客を疲れさせない。娯楽映画の鉄則はそこにある。心地よく観客を酔わせることだ。凄いアクションのつるべ打ちは観客に優しくない。トムはそのことを熟知している。
そして、この映画のテーマはアクションの限界に挑むことではなく、この映画は「友だちは大事」というお話なのだ、という事実に至る。終盤3人の仲間たちとの連係プレーを丹念に見せる。トムが目立てばいいという映画ではない。これはなんとみんなが輝く映画なのだ。
特にトムのチームのメンバーと、謎の女。彼ら主役グループの連係プレーが見事。なんとスパイで友情のお話だなんて、冗談だろ、と思う。でも、そうなのだから、笑える。大の大人で、本来冷酷非情であらねばならないスパイさんなのに、である。仲間を助けるためなら、上司の命令にも背く、だなんて、冗談のような、彼ら。なんだか、キラキラしてるよ。それもトムの人望のおかげ。映画の成功もそこに尽きる。トム様様(さまさま)である。
アクションとドラマ部分のブレンドが見事。だから、見ていてまるで疲れないのだ。謎の女も最後はちゃんと仲間になる。信じあえる仲間がいるって最高だぜ、なんていう映画なのだ。そんな風に書けばなんだか、バカバカしいけど、そこってとても大切な部分で、一見クールな映画なのに、そうじゃない。そんなこの映画を見て幸せな気分になる。暑い夏はこういうスカッとするアクション映画がいいな、と思う。