この地味なアメリカ映画が、とても心地よい。今時モノクロ映画なのだ。もちろん、それは確信犯で、でも、いまさらジャームッシュ『ストレンジャー・ザン・パラダイス』ではない。この映画はスタイリッシュでおしゃれなアート映画なんかを目指さない。
ひとりの女の子の毎日を描く青春映画なのだ。だからこれはパステルカラーの映画でもいい。「頑張る彼女に乾杯!」なんて感じでもいい映画なのだ。しかし、そうはならないし、そんなことはしない。
20代の後半(だからもう女の子ではない)の女が、恋愛よりも友情を大事にして、友情から裏切られる。でも、それは彼女の甘えのせいでもある。みんなクールなのだ。親友の彼女も、そう。フランシス自身も。でも、彼女はいつもどこかで、誰かに頼ってしまう。ダンサーを目指して頑張ってきたのに、芽が出ない。自分に自信を持っていたのに、そんな自信が揺らぎ始める。でも、彼女は負けない。というか、なんとかなると信じているようなのだ。手酷い目にあうかも、と思う。家もなく、仕事もなく、途方に暮れることになる。でも、なんとか、やっていく。そんなこんなの彼女を、映画は結構淡々と見せていくのだ。突き放すわけではない。でも、優しく見守るわけでもない。その絶妙な距離感が心地よい。彼女は結構(かなり)鈍感で、かなりヤバい状態にあるのに、めげない。というか、気付かない。いや、わかっていてそこをスルーしているのかもしれない。もしそうなら、なかなかふてぶてしい、というか、大胆。でも、きっとわかってない。
そんなおバカな彼女を見つめていく、それだけの映画なのだ。恋人よりも、親友。でも、その親友に恋人が出来てひとりになり、でも、彼女を恨むでもなく、新しいルームメイトを探し、ある時は誰かの部屋に転がり込み、勘違い女スレスレで、なんとか生きていく。ラストで、収まるところに収まるのも、夢破れてではなく、よかったね、と言える。とても不思議な心地よさ。
頑張る彼女を応援するガールズ・ムービーにはもううんざりなのだが、この映画のフランシスは応援したくなる。あまり頑張らないけど、タフな彼女が好き。美人なのに、老け顔って言われ、ダンサーだからそれでいい気もするけど、でかい。いろんなことがアンバランスなのだ。でも、気にしない。泣かない彼女も好き。細かいことを気にしない。だからラストで、新しく住むアパートのポストの名前入れがフランシス・ハまでで切れてしまっても大丈夫なのだ。そんな些細なこと気にしない。気にしない。