この春最後の期待作をようやく見た。廣木隆一監督女子高生3部作の完結編である。最近食傷気味の高校生恋愛ものなのだが、彼が撮るのならハズれることはない、と思いつつも、あまりにバカバカしい内容に少し躊躇していた。でも、見てよかった。これは凄い映画だ。
なんと往年の『奥さまは18歳』の上をいく、なんたって『奥さまは16歳』なのである。岡崎友紀もびっくりである。警察官と女子高生が結婚する話ということは誰もが知っている。だけど、ここまでリアルで大胆なファンタジーだなんて思いもしなかった。とことん無茶苦茶な設定を意地でも本気で押し通す。冗談にはしない。生々しくは、するはずもない。じゃぁ、どんな映画にしてしまうのだい、と開き直られたら、説明は難しいです、と答えるしかないけど、絶妙なバランスでありえないお話を素晴らしいメルヘンとして納得させるのだ。
舞台となる函館の街がすばらしい。そこは現実世界に確かに存在するのに、夢の中のような街を具現化した。それはロケーションの見事さなのだが、中心となる高校の美しさ、街並みの素敵さ。主人公の住むマンションの窓からの眺望。おとぎ話のような二人が暮らす家。そんなお膳立てがこれは夢の映画だと伝える。現実にはない世界で2時間のありえないような恋愛物語を満喫してくれたならいい、ということなのだろう。だから、ここにリアリティなんか求めない。だけど、こんなにリアルな夢を現実にスクリーンで見せる。なんだ、これは!
純情な女子高生が誠実で自分のことを心から大事にしてくれる男性と出会い、出会ったその日に恋に落ちる。その日に彼がプロポーズしてくれて、受け入れる。10歳の年の差がなんだか心地よい。彼はすべてを委ねられるちゃんとした大人だから。結婚してもキスさえしない。だって彼女はまだ未成年だから。そんな話は、ありえない、と思う人は残念だが、見ないほうがいい。というか、そんな人ですら納得させるほどの魅力がこの映画にはあるから、騙されたと思って見たほうがいいかも知れない。16歳の時父親を亡くした少年が、10年後、父と同じ職業に就き、父の遺志を受け継ぎ人々の幸せを守る警察官になる。そして、最愛の人を得て、彼女を全力で守る。16歳という時間が夢見る世界を作る。
クライマックスの文化祭のシーンでこの映画に意図は炸裂する。中途半端な文化祭はしない。ありとあらゆるイメージをすべて実現させる究極の文化祭を全力で作るのだ。廣木監督がここに作り上げる世界はそこに極まる。子供の頃にみんなが夢見た世界を映画の中に作る。それを信じられる人たちにだけ見える映画。魔法がかかる瞬間を目撃せよ。