思ったよりも軽いタッチの作品に仕上がっていて、それが少しものたりない。8㎏の重さに込められた痛みがあと少し胸に迫ってきてくれたなら、これはかなり面白い作品になったはずなのだ。たった8㎏なのか、それとも8㎏もの減量なのか、それってかなりな問題なのではないか。それは考え方次第で、どちらにでも取れてしまうくらいに微妙な重さなのである。10㎏という大台にはわずかに届かないそんな確かな重さをこの芝居が表現しきれたならよかったのだが。
終盤ダイエットから宗教へとスライドさせていくところで、それって少し違うんじゃないか、と思った。目に見えるダイエットと目に見えない宗教とは重なる部分が確かにある。目の付けどころは面白い。岩橋さんのねらいはその微妙な差と近さにあったのだということは理解できる。しかし、そのふたつは決して重ならないという事実を通して、作品自体がたどりつく地点をもう少し具体的に示して欲しかった。あのラストでの結論の保留は逃げでしかない。女たちが男の目を離れて宗教にはまっていく、というだけでは答えにはならない。
8日間のカリキュラムも明確にされないし、今は不在のこのダイエット道場の主催者が何者で、彼が目指したものは何だったのかも気になる。彼の失踪の理由への言及もない。すべてを曖昧にしたまま、わけのわからないところへと連れていく、というのは、岩橋さんの得意技なのだが、今回はそれが惜しいところで、上手く機能しなかったようだ。
ダイエットを通して失った体重の重みとは何だったのか。心と体がどう連動し、それが「8㎏」の不在の意味へと、どうたどりつくのか。いろんな可能性を秘めた題材だっただけに残念である。