習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ジョーカー フォリ・ア・ドゥ』

2024-10-18 06:22:00 | 映画
これはもともとは『バットマン』のスピンオフでしかなかったはずの映画だった。なのに本編に負けないくらいの大ヒット作となった。しかも作品も高く評価されてその年のベストワンに輝いた。そんな『ジョーカー』の続編。
 
お話はまさかの暴走展開をする。よくあるより激しく派手なスケールアップではない。なんと法廷劇にしてミュージカル映画。あり得ない地味映画になる。しかも全くアクション映画ではない。よくぞまぁこんな映画を作ったものだ。意外な、ではなくあり得ない、である。
 
主役のホアキン・ファニックスはもちろんだけど、レディガガ演じるリーという女がすごい。ジョーカーは彼女と出会い恋に落ちる。やがて彼女が彼を甘美な闇に引き込む。群衆もまたジョーカーを支持する。5人を殺害した凶悪犯の内面の葛藤を描くと同時に悪人であるはずの彼を支援する。弁護士は精神を病んだというよくある線から攻めるが、彼はリーにリードされて、弁護士を無視して、さらには解雇して自分で自分の弁護士になり裁判に望む。(あり得ない)
 
だが、判決は死刑。ここから裁判所の爆破から逃亡というクライマックスは圧巻だ。いきなりの爆発は誰が引き起こしたのか、はっきりした描き方はしない。誰が犯人でもいいからだ。さらには逃亡するジョーカーをたくさんの人たちが手助けするけど、彼はそれを喜ばない。逃げたいのではない。逢いたい。だから長い階段での別れのシーンが切ない。これはこんなラブストーリーだったのか、と思う。誰もが思いもしなかったドラマが展開する。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 乾ルカ『灯』 | トップ | 中江有里『愛するということは』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。