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映画・演劇のレビュー

上畠菜緒『イグアナの花園』

2024-10-21 04:52:00 | その他

娘がバイト先からイグアナを貰ってきて、育てた。今からもう20年くらい前になる。それから死ぬまで。あの日々は大変だった。僕は動物が苦手。しかも爬虫類である。あり得ない。しかもジェリ(イグアナの名前)はどんどん大きくなり、ゲージでは収まらない、やがて一部屋、彼女のために開けることになる。

 今回この本を手に取ったのはイグアナというタイトルだけで反応してしまったからだ。主人公の美苑は4年生。人付き合いは苦手。(最近そんな女の子が主人公の小説ばかり読んでいる。たまたまだけど)彼女は蛇の声が聞こえた。やがて、イグアナを飼うが、もちろん彼女とお喋りが出来る。ドリトル先生じゃないから、動物ならなんでも話せるというわけではない。わかるのはソノ(イグアナの名前)だけである。
 
やがて彼女は大人になり、(24歳)だけど10歳頃と変わらない生活をしている。ある日、母親が余命半年だということを知る。母から結婚して、と言われるが、興味はない。婚活をするけど、まるでダメ。父の残したカセットテープを聞く。そこには幼い頃に亡くなった父の思い出が詰まっている。

これは家族の話だ。孤独を愛する少女がイグアナと出会い彼女と家族になる。父の遺した別荘であるアトリエでソノとふたり、暮らしている。実家には母上とつばめちゃんがいる。18歳の頃からずっと母と美苑の世話をしてくれている。家族だ。アトリエにはミミがやって来る。大学の後輩。住むところがないから居候している。やがて幼なじみの倫太郎も来る。

ソノが亡くなってお別れ会をするまでのお話である。やがて母上も死ぬ。美苑はここから旅に出る。この本を読んでよかった。久しぶりにジェリを思い出した。彼女が苦手だった自分を思う。そして亡くなった母を思った。この家でジェリと暮らし、仕事の前には毎日実家に寄り、母に朝ごはんを食べさせてから職場に通っていた日々がよみがえる。

僕もまた美苑のように旅に出ようと思う。新しい生き方を模索して、家族と最後の時間を過ごす。そんなことを思わせてくれる素敵な本だった。

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