こういうスポ根ものは枚挙に暇がない。だが、それでも書き続けられるのは、みんなが新たな物語を欲するからだ。誰もが感じる悩み、苦しみを抱え、それでも前進していく。スポーツなんかやっても意味はない。でも、惹き付けられる。桂望実のこの小説が取り上げたのはトランポリンだ。トランポリンでオリンピックを目指す男たちのドラマである。
マイナースポーツを取り上げることのメリットは、知らざれざる競技の現実に触れることで、新鮮な驚きをそこに感じるところにある。そしてそこにある普遍性を知ることで、誰もが同じように悩み苦しんでいる、という当たり前にことを改めて知る。森絵都が『ダイブ!』で飛び込みを取り上げた時とアプローチが似ている。ただ、こちらはよりリアルだ。森絵都はほとんどマンガの世界観で作品をまとめた。だが桂はそうはしない。綿密な取材から立ち上げた物語は実にリアルだ。どちらが正しいとかいうのではない。いろんなやり方がある。そしてそれぞれとても面白い。この本のカバーには、表にも裏にも「もっと頑張れ」という文字で覆い尽くされてある。期待と重圧の象徴だ。それを受けてタイトルの「頼むから、ほっとてくれ」の太字が入る。この作品の描こうとするものが明瞭に示されている。
順也10歳のエピソードからスタートして、彼らの群像劇がそれぞれの語りで描かれる。その集積がこのドラマを作る。特定の誰かのお話ではない。彼らのその時の内面が、その時のエピソードとともに吐露される。話はとぎれとぎれだ。線として、ではなく、点として描かれる。だが、ちゃんと時系列を追う。最後は遼41歳まで。少年の日のトランポリンとの出会いから始まり、中年になって再びトランポリンに戻るまでが描かれる。オリンピックや、世界大会という華やかなドラマも描かれるのだが、それすらとても地味な出来事のように描かれていく。その瞬間が輝いているのではない。ずっと同じように黙々と練習してきたこと。その延長線上にある。
たった17秒ですべてが決まる。そんな瞬間に向けて毎日の練習がある。オリンピックの枠はたった2名。選ばれた者が一番強いわけではない。みんな強い。紙一重だ。だが、それだけで運命すら変わる。いや、変わらない。オリンピックに出たって、人生は続くからだ。そこがゴールではない。
マイナースポーツを取り上げることのメリットは、知らざれざる競技の現実に触れることで、新鮮な驚きをそこに感じるところにある。そしてそこにある普遍性を知ることで、誰もが同じように悩み苦しんでいる、という当たり前にことを改めて知る。森絵都が『ダイブ!』で飛び込みを取り上げた時とアプローチが似ている。ただ、こちらはよりリアルだ。森絵都はほとんどマンガの世界観で作品をまとめた。だが桂はそうはしない。綿密な取材から立ち上げた物語は実にリアルだ。どちらが正しいとかいうのではない。いろんなやり方がある。そしてそれぞれとても面白い。この本のカバーには、表にも裏にも「もっと頑張れ」という文字で覆い尽くされてある。期待と重圧の象徴だ。それを受けてタイトルの「頼むから、ほっとてくれ」の太字が入る。この作品の描こうとするものが明瞭に示されている。
順也10歳のエピソードからスタートして、彼らの群像劇がそれぞれの語りで描かれる。その集積がこのドラマを作る。特定の誰かのお話ではない。彼らのその時の内面が、その時のエピソードとともに吐露される。話はとぎれとぎれだ。線として、ではなく、点として描かれる。だが、ちゃんと時系列を追う。最後は遼41歳まで。少年の日のトランポリンとの出会いから始まり、中年になって再びトランポリンに戻るまでが描かれる。オリンピックや、世界大会という華やかなドラマも描かれるのだが、それすらとても地味な出来事のように描かれていく。その瞬間が輝いているのではない。ずっと同じように黙々と練習してきたこと。その延長線上にある。
たった17秒ですべてが決まる。そんな瞬間に向けて毎日の練習がある。オリンピックの枠はたった2名。選ばれた者が一番強いわけではない。みんな強い。紙一重だ。だが、それだけで運命すら変わる。いや、変わらない。オリンピックに出たって、人生は続くからだ。そこがゴールではない。