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映画・演劇のレビュー

東直子『ゆずゆずり』

2009-04-17 21:35:02 | その他
 東直子さんの小説は淡い。輪郭さえおぼろだ。この小説だってそうだ。主人公の作家が同居している3人との関係が見えない。説明しないからだ。彼女はそんなんなことどうでもいいことだ、と思ってる。たぶん。

 仮の家での生活が続き、でもいつまでもこのままではいけないと、新しい家を購入するのだが、その辺の事情もわからない。これも説明がないからだ。

 なんでもない時間の積み重ねがここにはある。エッセイのような日記のようなエピソードを綴る。盛り上がりなんかない。ただ、静かに時は流れていく。

 読み終えた後に何も残らない。話がないから、どんなことが書かれてあったのかすら忘れた。でも、なんとも言いようのない幸福感は残っている。それだけで僕はこの小説を認める。

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