習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

万城目学『鴨川ホルモー』

2009-04-17 21:53:29 | その他
 来週くらいに映画を見るから、それから書こうと思ったけど、別に映画と小説は別個だし、映画の印象と絡めるつもりもないからさっさと書いておこう。初めて万城目さんの小説を読む。『鹿男あおによし』や『プリンセストヨトミ』とか避けていたわけではない。なんとなく【森見登美彦の偽者】みたいな印象が僕にはあって、あまり食指がそそられなかったのだ。

 森見氏の新刊『恋文の技術』を読んだ後、偶然読む本がなくなった瞬間があり、しかたなく手元にあったこの本を手にした。これも偶然のいたずらだ。【偽森見作品】初チャレンジである。【本物森見】に引き続いて、というのが面白い。なんだか安物の森見小説を読んでいる気分になった。それって凄い。だって偽森見なんて言ってるのは僕一人で、とんでもない話が京都を舞台にしてるがために、さもありなん、って感じでそんなふうに理解する。僕の勝手でしかない。万城目さんが聞いたらきっと怒るだろうなぁ。【偽森見】ってあんまりだ。だが、なんとなく2人のテイストはとてもよく似ている。アプローチも含めてである。偽森見なんていう失礼極まりない言い回しはこの際やめる。当然のことだろう。すみませんでした。

 さて、感想である。荒唐無稽なお話が大学生(同じく京大生!)のしょぼい日常の中で展開していく。ホルモーを巡る驚天動地のお話は、大学生の日々の中にすっぽり埋もれてしまいそうなくらいだ。そこが作者のねらいでもある。こんな話なのに、こんなにバカバカしいのに、なんだか切ないし、こんなにも気持ちがいい。

 正直言うと、なかなかおもしろく読めたのだ。ここまでもバカバカしい話を厭きさせることなく。映画の予告編をさんざん見せられているからへんな先入観が出来ているにもかかわらず、驚天動地のお話を浮かれすぎずにただの青春小説のように描けてる。ビジュアル重視の映画版もこの映画のような上手いねじれ方がお話の方に、出来ていたらいいのだがどうだろうか。本木監督は『ゲゲゲの鬼太郎』2部作でがっかりさせられてるから、あまり期待はしない。

 改めて言う。これは実に素直な小説だ。嫌いではない。万城目さんは森見なんかよりきっといい人だ。(こんな風に書いたからといって、ここで森見氏を批判するつもりはない。だいたいそんなことしてどうする)

 

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