これは重い。横山拓也さんは、この重い話から目を逸らすことなく、見つめていく。40歳前になり、ひとりで生きていく女をとことん追い詰めていく。峯素子さんがこのヒロインを演じる。だが、芝居全体は、アンサンブルプレーだ。ことさら彼女を際立たせることはない。登場したところからは、ほぼ出ずっぱりとなる5人によるアンサンブルがこの作品世界を作る。
姉と妹の話でもある。妹は姉への屈折した愛ゆえ、彼女を追い込むことになる。冷徹な妹の頑なさが、後半のポイントになる。2人の和解を落とし所にはしないのもいい。芝居は、どこまでも、ヒロインを追い詰めていくのだ。
何を信じて、どう生きていけばいいのか、わからない。母が死んだあと、今まで、父を助けて、この小さな食堂を切り盛りしてきた。幼子だった妹の面倒も見た。自分の人生を犠牲にして生きてきた。気づけば、もうすぐ40歳。
父が倒れた。復帰したとしても、もう厨房には立てない。もしかしたら、死んでしまうかもしれない。調理は一切父がしていたから、ここはもう閉鎖しなくてはならない。では、これから自分はどうして、生きていけばいいのか。この地の特産物である貝を使ったプロジェクトに参加していた。もちろん、それは父の料理人としての腕を見込んでのことだったが、彼女もその
プロジェクトに活路を見出していた。そんな矢先だ。父がいなくなれば、このプロジェクトも立ち消えになるかもしれない。何かにすがりついて、なんとか、立っていられた。なのに、それを失うかもしれない。このプロジェクトの推進メンバーである駒井との時間を心の支えにしてきた。妻子持ちである彼に心魅かれた。そこには未来はない。わかっていて、でも不倫に走ってしまうくらいに、追い詰められている。
中学生の頃の母の死。その後、父と2人で生まれたばかりの妹を育てて、この食堂を切り盛りしてきた。妹は成人して結婚して、この家を出て行った。横山さんは決して彼女をクローズアップさせていくわけではなく、話を展開していく。まず今ある現状をきちんと見せることで、関係性の中から、浮彫りにするのだ。それを演出の上田一軒さんは5人の役者たちの個性を大切にしながら、丁寧に台本世界を立ち上げる。ヒロインの睦美が追い詰められていく姿を、最初はゆっくりと、やがて気付くとすべてがそこに集約されていくように見せる。
こんなにも重くて暗い話を、横山さんがとことんつきつめて見せる、ということに驚きを禁じ得ない。逃げ場なんか用意しない。これではもう売込隊ビームの頃には戻れないのではないか、と思わせるほどだ。しかし、一見軽やかな芝居だと見せかけた売込隊ビームも、もとを正せば重くて、暗くて残酷だった。初期の作品はいずれもそうだった。大体最初の作品は『トバスアタマ』である。『鬼斬り』なんていうのもあった。これはあの頃のテイストを取り戻して、さらに突き詰めていこうとした、そんな作品でもある。
姉と妹の話でもある。妹は姉への屈折した愛ゆえ、彼女を追い込むことになる。冷徹な妹の頑なさが、後半のポイントになる。2人の和解を落とし所にはしないのもいい。芝居は、どこまでも、ヒロインを追い詰めていくのだ。
何を信じて、どう生きていけばいいのか、わからない。母が死んだあと、今まで、父を助けて、この小さな食堂を切り盛りしてきた。幼子だった妹の面倒も見た。自分の人生を犠牲にして生きてきた。気づけば、もうすぐ40歳。
父が倒れた。復帰したとしても、もう厨房には立てない。もしかしたら、死んでしまうかもしれない。調理は一切父がしていたから、ここはもう閉鎖しなくてはならない。では、これから自分はどうして、生きていけばいいのか。この地の特産物である貝を使ったプロジェクトに参加していた。もちろん、それは父の料理人としての腕を見込んでのことだったが、彼女もその
プロジェクトに活路を見出していた。そんな矢先だ。父がいなくなれば、このプロジェクトも立ち消えになるかもしれない。何かにすがりついて、なんとか、立っていられた。なのに、それを失うかもしれない。このプロジェクトの推進メンバーである駒井との時間を心の支えにしてきた。妻子持ちである彼に心魅かれた。そこには未来はない。わかっていて、でも不倫に走ってしまうくらいに、追い詰められている。
中学生の頃の母の死。その後、父と2人で生まれたばかりの妹を育てて、この食堂を切り盛りしてきた。妹は成人して結婚して、この家を出て行った。横山さんは決して彼女をクローズアップさせていくわけではなく、話を展開していく。まず今ある現状をきちんと見せることで、関係性の中から、浮彫りにするのだ。それを演出の上田一軒さんは5人の役者たちの個性を大切にしながら、丁寧に台本世界を立ち上げる。ヒロインの睦美が追い詰められていく姿を、最初はゆっくりと、やがて気付くとすべてがそこに集約されていくように見せる。
こんなにも重くて暗い話を、横山さんがとことんつきつめて見せる、ということに驚きを禁じ得ない。逃げ場なんか用意しない。これではもう売込隊ビームの頃には戻れないのではないか、と思わせるほどだ。しかし、一見軽やかな芝居だと見せかけた売込隊ビームも、もとを正せば重くて、暗くて残酷だった。初期の作品はいずれもそうだった。大体最初の作品は『トバスアタマ』である。『鬼斬り』なんていうのもあった。これはあの頃のテイストを取り戻して、さらに突き詰めていこうとした、そんな作品でもある。