『2.43清陰高校男子バレー部』の作者が贈る青春小説。4篇からなる中短編集。いずれも中学生が主人公である。時代を超えてあの頃と今をつなげる作品がふたつ。最初の『零れたブルースプリング』はお互いを偽って文通する男の子たちの話で、あまりに可愛くて笑える。昔こんな映画やドラマがあったような気がするけど。それくらいレトロ調お話。風船で届いた手紙から始まるふたりの往復書簡。怜を女の子だと勘違いした満夫。仕方ないから女の子のフリして返事を書いてしまう。そこから始まる文通。最初と最後は現在の満夫の娘と怜が満夫の墓参りに行くといういかにもな構成。
最後の『ハスキーボイスでまた呼んで』もレトロな話。中学生だった死んだ妻がタイムスリップしてやって来て同居することになる話ってこれもまたいかにもな設定。
この中編の2篇に挟まれた短編2作はかなりとんがった作品になっている。『ヒツギとイオリ』は痛みを感じない少年と彼に痛みを理解させるためにやって来た少年の話。『flick out』は他者の侮蔑により今いる空間から弾き飛ばされる少年の話。今いるところからいきなり別の場所にいることになる。それが教室の掃除用具ロッカーだったり、トイレの個室の中だったり。そんな上手く説明できない事態から始まる話が描かれる。
総合タイトルである『不機嫌な青春』という絶妙なネーミング通りの痛い話ばかり。必ずしも凄い小説ってわけではないけど、読んでいてなかなか楽しい作品ではある。