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映画・演劇のレビュー

演劇集団☆邂逅『紅の記憶』

2013-06-11 22:21:54 | 演劇
華やかな衣装に身を纏った女性たちが歌って踊って、とても楽しそうだ。なんとも邂逅らしいお芝居で安心して見ていられる。だが、そこまでだ。

童話の国のお話で、そこでは王子様がいなくなって秩序が乱れてしまったらしい。記憶をなくした男が、目覚めると、「あなたは王子様だ」と言われ、物語の中のお姫様たち(シンデレラ、白雪姫、いばら姫)を助けて欲しいと言われる。何が何だかわからないけど、仕方ないし、悪い気分ではない。お伴とともに、それぞれの童話の世界を旅することになる。

なんともたわいもない話なのだが、悪くはない。この単純さが、力になったならば。だが、あまりに展開は単調で、単純すぎた。せめて、昨年の『源氏物語』をモチーフにした作品のようにストーリーに仕掛けが欲しかった気がする。悪魔の魂を売った女(最後で『美女と野獣』のベルだとわかる)と男との話をもう少し書き込んでその因果関係から作品全体をまとめるべきではないか。彼らの関係性を描くことで、3つの童話の単純な世界が何だったのか、が見えてくるという構図がもっと明確になるはずだ。

 何が正しくて、何が誤りであるのかなんて、わからない。立場や考え方がほんの少し変わるだけで、それらはとても微妙なものとなる。そういう曖昧な部分にある魔の時間を描ききれたなら、これはもっと面白い作品になったはずだ。要するに、タイトルにある「紅の記憶」が意味するものをもっと鮮明に描いたならそれが可能だったのである。なんとも惜しい。


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