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映画・演劇のレビュー

『4ヶ月、3週と2日』

2008-11-30 10:41:58 | 映画
 昨年カンヌ映画祭でパルムドールを受賞した評判の映画である。ただ、同時にゲランプリを受賞したのが河瀬直美の『殯(もがり)の森』であることを考えるとあまり期待は出来ないと思っていたが、やはり残念な映画でがっかりした。この2本の受賞作を並べると審査員の意向が明確に出ていることがわかる。具体的な内容を観念的な処理で見せた頭でっかちな映画が好きみたいだ。それでは題材のおもしろさが生きてこないのを、あまり考えず、評価したようだ。審査委員長は誰だろう。後で調べることにしよう。

 それにしても不思議なタイトルだ。事前情報は一切なかったから、しばらく見ていてもわからなかった。だいたいこの映画が何を描いているのかも、なかなか明確にはならない。ようやくこの数字が主人公の友人が今置かれている「現実」であることがわかる。これは彼女を助けるために奔走する主人公の1日が描かれていく映画だ。

 「4ヶ月、3週、2日」はおなかの中に赤ちゃんが宿った日からきょうまでの日数。今という時間を客観的に示した数字だ。主人公はこの友人の堕胎を助けるために振り回される。87年、ルーマニアでの現実を背景にしてドキュメンンタリー・タッチの冷徹なドラマはひたすら重くて暗いトーンで貫かれている。正直言って面白いとは言い難い。沈鬱な雰囲気だけで、災難にあった主人公の心情は伝わるがそれが何かを示すわけではない。赤ちゃんの死体をダストシュートに棄ててきたりするシーンも淡々と描いていて、見てて気分が悪い。救われない映画だ。

 この日、続いて見た『ジェーン・オースティンの読書会』はアメリカ映画らしい暖かいドラマでほっと一息ってはずだったのだが、見終えてなんだかがっかりだった。中途半端な印象しか残さない映画だ。オースティンの6作の小説を読んで月に一度読書会をする中年男女の群像劇。なかなか思うようにいかないそれぞれの人生の一齣を描いていく、という定番の展開を見せる。でも、彼らは精一杯に生きている、というのも定番だ。このいかにもなお話をいかに心地よく見せるのかが作者の腕の見せ所なのだが、僕はあまりこれにはのれなかった。

 先日見た昨年キネ旬のベストテンで5位(くらい)に入っていた『やわらかい手』もそうだが、評判ほどにはたいしたことがない映画って最近多い。それってなんだろうか。僕の感性が普通の人とはずれてきたのか?もちろん評価される理由はわからないでもない。だが、もっといい映画は他にもたくさんあるぞ。なのに、それ以上にこれらが高く評価されるなんてなんだか、面白くない。まぁ、本当はどうでもいいんだけど。(『やわらかい手』に関してはまた時間があれば書きます)


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