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映画・演劇のレビュー

ego-rock 『僕のカラスと君の揺りかご』

2008-11-30 00:43:49 | 演劇
 生島裕子さんの視点と発想はとてもユニークだ。全体のバランスを崩してしまうような展開を平気でしてしまう。論理よりも感性、直感を大事にしてしまうところは女性作家ならではの大胆さだ。

 あまりの展開に最初はついていけない。恋人が自殺したことをきっかけにして、死にたいと思っている人間の援助をするという仕事を始めた、だなんてそんなのありえない。しかも、いきなり銃を振り回したりして、この国は無法地帯かよ、と思わされる。リアルには程遠いこのあんまりな展開についていけない人は無理です。ここで振り落とされた人はもうこの芝居は見れない。

 なんとかそこをクリアした人も、さらなるトラップでリタイアすること必至だ。この自殺幇助の仕事(あるいは殺人行為)を商売にしている彼女のところにアニメおたくの29歳童貞クンがやってきて、彼女の助手となる。彼は自分の好きなアニメの主人公と彼女がそっくりなので、彼女に恋いをして一途に突き進む。いくらなんでもこの設定はないだろ、と思うが、お構いなしだ。この2つを基本ラインにして、ドラマは展開していくのである。

 ひとりの男の自殺を巡り、彼と関わった2人の女のドラマが描かれる。彼の死を受け入れられない主人公と、彼の死を後押しして彼の死を共有する女。この2人を光と影として設定対比し、死というものを見つめるドラマというのが本来の意図のはすだが、前述の基本設定のために芝居全体はいびつな方向に向かっていく。

 全体の構造はある種のパターンを踏まえているにもかかわらず、作品は今まで見たことがないようなバランスの悪さを持っている。そこをおもしろいと受け止められるか否かがこの作品の好悪の分かれ目となりそうだ。

 ブラックチェンバーの、広くて暗い空間を活かして、モノトーンで統一された寒々とした心象風景を描くことに成功している。

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