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今年のクリスマス公演は昨年に引き続いてしろみそ企画のなかしまひろきの作、演出。(というのは間違いで、なかしまさんは一昨年! 昨年は伊地知さんでした)彼がふだんの邂逅とは一味違う世界を見せてくれる。ファンタジーだけど、今回はあまりに等身大の人たちの群像劇でこんな邂逅は見たことがない。なかしまさんだからこそ可能だった邂逅ワールドだろう。
ここは昭和に建てられたオンボロアパート。そこで暮らす訳あり住民たちと管理人(なんと!中村多喜子が女子を演じる)のやり取りが描かれる。『めぞん一刻』を思わせる設定。お話の中心になるのは中庭に立つ大きなクヌギを伐採したことから起きる騒動。
クヌギの木の化身を雨下結音(役名は飛騨真里=ひだまり、陽だまり)が演じる。彼女が人間になってやって来たことから始まる。たわいないドタバタは気がつくとなんだか切ないドラマになる。彼女を含む8人の曲者揃いの住人たち(それぞれの描きわけもパターンだけど実に適切で上手い)のドラマと彼らに振り回される管理人、という図式。そこからさらには切り倒されたクヌギを巡る管理人の想いが交錯するドラマに。子供の頃、この木に登って遊んだ記憶。今ここで管理人をしながら何を思うのか。一応主人公であるそんな管理人さんとヒダマリの話に、もう少し奥行きを与えられたならよかったのだが、そこは少し残念。だけど、とても気持ちのいい100分だった。