数日前、この小説の映画を見る予定だった。でも、諸事情から見送った。で、先に小説を読むことにした。今日映画に行こうと思ったけど、小説が面白すぎて映画館に行く時間を惜しんで先にその時間で残り半分を読むことにした。映画は来週に見に行こう。予想したように、先が予想できない小説で読み始めたなら止まらない。
華子の話が、凄すぎた。東京のお金持ちの世界なんて想像もつかないけど、それをちゃんと丁寧に書かれると、笑うしかないほど、凄まじい。嘘くさいくらいに。でも、冗談ではないのだろう。きっとこれは真実なのだろう。そんな彼女が幸一郎と出会い、自分よりもっと金持ちの世界を知る。コンプレックスを感じる。そんなおはなしを読みながら、なんなんだこれは、と思う。
さらには次に美紀の話に移り、ここでも世界の違いに驚くことになるのだけど、どう言えばいいのだろうか、ここに描かれる(自分とは全く関係ない)スノッブの現実を見ながら、それを笑い飛ばすのではなく、真剣に世界の違いって何なんだと思わされるのだ。そこには見たこともない世界がある。それをしばし垣間見る。興味本位ではなく、上流階級という世界を覗き見、それを「リアル」と感じ、感心するのではなく、距離を置いて観察するうちに、引き込まれる。ふたりの女性の抱えるそれぞれの問題が全くの他人ごとだし、自分とはまるで関係ない世界なのに、とても気になるのだ。読みながらこの先どうなるのか、気になって、他のことが手につかない。
自分とは違う世界、でも、こんな世界はあるだろうけど、死ぬまで(もちろん死んでも)関わることのない世界。でも、そこにいる彼女たちを見ていると、そこから目が離せなくなる。お嬢様の華子と庶民の美紀。ふたりのお話にどうしてここまで心惹かれるのか、よくわからない。