実はこの小説のことを書きたいとずっと思いながら、書く機会もなく時間だけが過ぎた。あまりに面白くて、前半を読んだところで、感想を少し書いた。書いた後、読んだ後半、なんと全くタッチが変わってしまうのだ。これは詐欺だ、と思うくらいに。あんなに幸せだった小説が一転してとんでもなく不幸なお話へと転じる。騙された気分だった。読んでいてあまりにつらすぎて。あんなにも幸せだった小説が、まさかこんなことになるなんて、想像だにしなかった。そのことを書かなくては、と思った。前回書いたことは嘘になる。
いろんなことはあるけど、最後は幸せになれると信じたのに。でも、彼女の人生はまだ始まったばかりだ、ということに気づかされる。
大切に思っていた施設の後輩を信じ切れず、信じていた人には裏切られ、とんでもない出来事の連続で、ボロボロになる。読んでいて辛すぎた。こんな未来が待っているなんて、前半を読んでいたときには思いもしなかったことだ。
これは素敵な(あるいは単純な)ハートウォーミングじゃないか、と悦に入っていた。それなのに、この展開である。世の中何が起こるやらわからない。小説のなかだって同じなのだな、と痛感させられた。久々に読む思いもしない小説だった。
あれやこれやあったけど、彼女は最後に、再び東京に戻ってくる。そこから人生の2回戦が始まる。きっと彼女なら大丈夫だ。大好きなものがある。カレーが好きだ。それだけは変わらないし、それだけで十分だ。