男よりも女同士で生きること。2人ともそういう選択をする。もちろん、それがずっと続くかどうかはわからないけど、それは男と女であっても同じだろう。華子は結婚したけど、自分から離婚した。美紀はもちろん結婚なんかしない。同じ男と関わりながら彼女たちふたりは男を取り合うわけではなく、友人になるでもなく、でも、出会うし、付き合う。別々の世界で生きるふたりの女性の邂逅。たまたま美紀が付き合っていた男と華子は婚約した。ふたりの関係はそういう関係だ。
原作を一足先に読んでしまったけど、それがよかった。あの素晴らしい小説で読み終えて、これをちゃんと映画にできるのか、と心配するほどだったけど、そんなのはいらぬ心配だった。映画はなんとあの小説を超えるほどの出来栄えだったのだ。凄すぎる。
結婚なんかよりも大事なものがある。それは女同士の友情なんて言わない。でも、大切なものは確かにそこにある。自分らしく生きるために何が必要なのか。何よりも深くて尊いもの。それがこの映画のなかで描かれるのである。しっかりと目撃して欲しい。
300ページある原作をダイジェストにするのではなく、ちゃんとポイントを抑えながら、原作に忠実にたった1時間で描き、映画は後半1時間、なんとオリジナルである。だから、原作を先に読んでいてよかったのだ。小説では描かれなかったその先も映画は綴る。原作は3章で終わるのだが、映画は5章仕立てだ。少しアレンジして原作小説では描かれていなかったエピソードも交えて、後半は描かれる。でも、原作は損なわれない。しかもラストでちゃんと原作に戻ってくる。
説明的な描写は全くない。ほんのちょっとしたセリフや光景ですべてを描き切るからだ。見事というしかない。主人公のふたりは3度しか出会わない。しかも、そのうち1回は結婚式場で。最終的に彼女たちは、お互い同じように同性の友人と仕事をすることになる。パートナーとして協力して生きていく。そんな姿が感動的だ。
1年後の再会を描くエピローグも素晴らしい。華子は離婚した夫とたまたま再会する。彼だって彼女を失った後の時間をしっかりと生きているのだと思うと、なんだか愛おしい気分になる。この映画にはいくらでも語ることはある。だから、敢えて何も書かない。