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こういう映画が最近の中国は大好きだ。香港の中国返還以降、一時期本拠地をアメリカに移してハリウッド進出を決め込んだツイ・ハークだったが、なかなか上手くいかず、結局21世紀に入って、再び中国に戻ってきた。香港映画ではなく、より大きなマーケットを目指して中国映画の大作を手掛け、再びヒットメーカーの名を欲しい儘にしている。歴史アクション3D大作を続々と作り、大衆を大喜びさせているようだが、なんかあんまり安易すぎてつまらない。いつも同じ感じで、もう驚かない。
これは中国版シャーロック・ホームズということらしいディーの活躍を描くアクションである。若かりし日のディーをマーク・チャオが演じた。冒頭の唐の船団が何者かに襲われて撃沈するシーンから、河童の化け物が出てきて、生贄となるはずの美女を攫う。アクションのつるべ打ちで、ラストの海竜との戦いまでを一気に見せる。だが、映画は弾まない。
中国復帰の最初がこの作品の第1作である。アンディ・ラウが主人公のディーを演じた。タイトルは忘れた。(調べると、『王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件』というタイトルでこんなの覚えられないや)これはなかなか楽しかったけど、そのあとがいけない。
2012年正月、上海に行った時、ジェット・リー主演のツイ・ハークの新作が上映されていて、思わず劇場に駆け込んだ。3D大作のその映画は、これがツイ・ハークなのか、と我が目を疑うような空疎な作品だった。『竜門飛甲』。(日本では『ドラゴンゲート』というタイトルで後に公開された)
あれから3年。満を持しての本作である。まるで変わらない彼の仕事ぶりにそろそろ諦めるしかないか、と思わされる1作だった。かって香港のスピルバーグと呼ばれていた昔年の面影はない。(というか、もうスピルバーグ自身も昔のような勢いはないけど)確かに派手で、楽しいアクションエンターテインメントなのだが、以前のようなチャレンジャーとしての彼は、もうそこにはいない。ここにはなんだか狡賢い商売人の顔したオヤジしかいない。若くして衆目から嘱望され、斬新で画期的なアクション映画を目指した青年ツイ・ハークはどこにもない。
いまどきマットペインティングによる書き割り映画を堂々と作るのは、結構大胆で悪くはないと思うけど、それがただの手抜きにしか見えないのはどうだか。アイデアだけは豊富で、それをゲリラ的に実現した香港映画人が、中国の巨大資本を携えて、こんな骨抜き映画を量産している姿は虚しい。チャウ・シンチーやピーター・チャンは堂々と自分の映画を作っているのに、どうしてトップランナーだった彼はこんなにも失速したのか。