4つの短編からなる連作だ。4人の少女が描かれる。4人とも自分に自信が持てない女の子だ。もちろん、事情はそれぞれ違う。お互いが羨ましい。人には自分にないものがあるからだ。隣の芝生に憧れるのは大人も子供も変わりない。小学校から中学に上がり、ほんの少し大人に近づいたけど、まだまだ子供でしかない。中学という場所はとても不自由で、息も絶え絶えになっている。そんな女の子たちのそれぞれの抱える問題が描かれていく。
4人の女の子たちの立ち位置はとても微妙に設定されてある。ある種のカテゴリーでの分類なのだが、ただのパターンには陥らせない。誰もが心当たりはあるが、自分だけの問題と認識できる。そんなポジション。かわいいとか、かわいくないとか、それは決して客観的なものではない。自分だけがそう思っていても、それだけで、自分にとっては大問題で、それは他人から見たら、まったく気にするような次元のことではないかもしれない。(まぁ、他人だしね)でも、どんな些細に見えることでも、嫌なものは嫌。それは容姿だけではなく内面も同じ。誰もがそれぞれのコンプレックスを持つ。それと向き合い、折り合いをつけて、生きている。
みんなから好かれて、天然で、(そんなふりしているだけ)かわいい。でも、空気が読めない女の子、だと思われている。自分では気づいている。
転校生で、美人で近寄り難い。周りを拒絶しているようで、自分はあなたたちとは、レベルが違うから、というオーラを出している。本当は、そんなわけではない。でも、理解されない。
自分がかわいくない、と思っている。自信がない。でも、本当はそうじゃないとも、思っている。誰かが後押ししてくれたなら、自信が持てる。
自分の顔が嫌いで嫌いで仕方ない。この容姿のせいで、みんなから笑われている。整形してせめて人並みになりたいと思う。
4人は4人とも同じような悩みを抱えている。多かれ少なかれ、誰もがそういうコンプレックスを抱えているはずだ。ここに書いた4人の差なんて、他人にはわからないのではないか。もちろん、先の2人は別の意味で、それぞれ恵まれている。かわいい。後の2人はかわいくない、と分類されるかもしれない。でも、その差は彼女たちが思うほど、決定的ではない。
彼女たちの抱える大きな問題は、実はとても微妙な問題なのだが、彼女たちにとっては決定的なものだ。そのことは、みんなわかっている。河合さんはどこにでもいるような少女をとても丁寧に描写した。彼女たちの差異の大きさこそが、この作品のねらいだ。
共感を抱かせるためではない。こんなにもみんな違う、ということを明確にするためだ。自分と向き合い戦うしかない。そんな彼女たちの戦いぶりを見ることで、勇気がもらえる。