
もうこの手のヒーロー映画はいいよ、という気分なのだが、X-MENシリーズの完結編なので、ついつい見に行ってしまった。暑かったからスカッとするアクション映画が見たかったというのもある。あまり期待はしてなかったのだが、想像以上の出来で大満足する。
複雑なストーリーを用意して人間ドラマとしても楽しめるように作られてある。旧シリーズ3部作につながる新3部作の完結編という『スターウォーズ』のような連作なのだが、今回が一番面白い。ひとりひとりのドラマをちゃんと見せていく群像劇のスタイルにしたのがいい。
冒頭の紀元前3600年のエジプトでのエピソードが摑みとして効いている。アポカリプス誕生秘話から始まり、現代(1980年代)へと戻ってきて、そこでも、複数のエピソードを怒濤のように並べていき、なかなか本題には入らない。でも、それが今回は実に効果的。X-MENではないと言われてもいいくらいに、それぞれのお話が丁寧。もちろんそこで描かれるのは、彼ら超能力者がそれぞれの環境でいかに阻害されたり迫害を受けたか、という定番なのだが、それだけでも1本の映画が作れそうなくらいの重厚さ。マグニートのエピソードなんて泣かせる。
善と悪の対決という定番で、チームごとの団体戦というアベンジャーズ・パターンなのだが(というか、こっちの方がシリーズとしては古いのだが)とても強いし歯が立たない巨悪にみんなが力を合わせて挑むという、これまた定番の展開なのに、なぜか新鮮。
シリーズだから、みんなもうそれぞれのキャラは既成の事実なはずなのに、そこも新鮮なのは、彼らの背景が丁寧に描かれたからだ。なんだか初めてX-MENを見た気分にさせれれる。(ウルヴァリンもちゃんと登場するというサービスもある)
この手の映画の定番を外すことなく、定番をマンネリではなく魅力へと変える。ブライアン・シンガー監督のマジックに魅せられた。善玉よりも悪者側を対等以上で描いたのが成功の理由であろう。善悪ではなく、個々人の事情を前面に押し出す。しかも、テンポよく、である。2時間24分の長尺映画なのに、退屈させるどころか、その長さがちゃんと必要な作品になっている。アクションも派手なだけのCGではなく、ストーリーを支えるためのものとなっているのがいい。ストーリーに特撮が奉仕するという当然のことがちゃんと出来ているのだ。単純なお話でも、作り方次第では楽しめる、という当たり前のことを教えてくれる。