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環境活動家の若者たち。彼らの行為はテロでしかない。それは彼ら自身もわかっているが、止むに止まれぬ想いが彼らを突き動かす。映画はドキュメンタリータッチで8人の若者による命がけの石油パイプライン爆破を描く。
タイトルのカタカナ表記ではない『HOW TO BLOW UP』は日本語タイトルとしては異色。UPの後ろのa Pipelineは記載しないのは長くなりすぎるからか。原題は『How to Blow Up a Pipeline』。
原作は「スウェーデンの気候変動学者アンドレアス・マルムが2021年に発表したノンフィクションということだ。(「パイプライン爆破法 燃える地球でいかに闘うか」)それを「ダニエル・ゴールドハーバー監督と主演を務める俳優アリエラ・ベアラーが共同で脚本を執筆し、物語の形に大胆に翻案した」と映画.comにあるが、原作は一切知らないけど小説ではなくノンフィクションで気候学者が書いた環境破壊への警鐘を促す書の映画化というのは面白い。
映画は明らかに普通の物語になっている。メッセージ色は控えめで、娯楽活劇映画。何故か懐かしい映画『新幹線大爆破』を思い出してしまった。高倉健たち犯罪を犯す社会的弱者が政府に向けて牙を向く。倒産した零細工場の社長、沖縄から集団就職でやって来た若者、学生運動の夢敗れた男。3人のもう後がない男たちが新幹線を人質にとる完全犯罪を目指す。
FBIの裏をかいてパイプラインを破壊して警鐘を鳴らす彼らは『新幹線大爆破』の彼らと似ている。回想で8人のバックボーン、この計画に乗るきっかけを描き、お話の途中順次挿入する。よくあるサスペンス映画の語り口になっている。FBIが言うようにこの映画がテロ行為を助長するとは思わない。それどころか反対にこんな映画が作られることは悪くないと思うけど。