主人公の女が霊媒師で、セレブの女性(有名な女優?)のスタイリストかなんか、をしていて、双子の兄が死んで、自分も兄と同じ病気(遺伝か?)を抱えていて、(でも、兄の死は事故?)近い将来死ぬかもしれないという不安を抱きながら(芥川龍之介か!)死んだ兄の霊が見える、とか。さりげなく、提示されていく情報が、遅いから、なかなか描かれていることの全体像が見えないまま話だけは、どんどん進んでいき、なかなか、ついていけない。置いてけぼりにされそうな勢い。説明はないまま、話は進む。彼女の姿を追いかけるばかり。でも、そこから目が離せない。
これはホラー映画なのか、と思うけど、心霊現象とか描かれるけど、それが目的の映画ではないことは明らか。では、何が描きたいか。どこに向かうのか。定かではないまま、どんどん進む。彼女の仕事が『パーソナル・ショッパー』(最初からそういうタイトルの映画だけど、説明されるまで、その意味を考えてなかった)であると、映画の中で明らかになると「確かに、」と今更ながら、納得する。
もちろん、この映画の目的は犯人捜しではなく、彼女の内面の軌跡を描くことで、不安を抱えながら生きている日々自体が映画のテーマで、それがどこに行きつくのかを見守ることになる。それだけにあのラストは衝撃だ。えっ?!そこ?って感じ。
殺された彼女の雇い主のセレブに対して彼女が抱いていた憧れは、羨ましいとかではなく、もうひとりの自分。でも、あり得ない自分。彼女の身に着けるものはすべて自分が用意している。彼女の趣味を汲み取りセレクトしても、それは自分の趣味にも重なる。
クリステン・スチュワートの無表情がどこに行きつくか、目が離せない。説明はないまま、ラストまで、息をつく間もない。一瞬さえスクリーンから目を離したなら、とんでもないことになる。そんな不安が全編を覆う。
終わったあと、突き放された気分になる。安心させるような落としどころは用意されるはずもなく。さらなる不安だけ。オリヴィエ・アサイアス監督は、別に観客を煙に巻こうとするのではない。わけのわからない不安はどこにでもある。