今年のウディ・アレンはとてもいい。毎年1本のペースでコンスタンスに新作が公開される近年の彼だけど、ラブストーリーなのに、それだけではなく、彼の大嫌いなハリウッドを舞台にしているのに、そんなにシニカルでもなく、とてもバランス感覚のいい作品に仕上がった。軽やかに流れていくドラマを少し距離を置いて余裕で見守る。第3者のナレーションで話を進めるのもいい。変に感情移入しないで、見れる。主人公の青年を穏やかに見守ることになる。若さゆえの暴走とかとは無縁だ。なぜならば彼自身も静かに「自分の今」を見守る、って感じなのだ。
ハリウッドの大物プロデューサーであるおじさんを頼ってニューヨークからやってきたけど、おじさんは忙しくて仕事を紹介してくれないどころか、会ってもくれない。なのに、あまり焦ることもなく、のんびりしている。1930年代を舞台にして、なんの野心もない平凡な若者が、なんとなく流されるように華やかな映画の都で降らす日々が、のんびりとしたタッチで描かれていく。
やがて彼は、おじさんの美人秘書に恋をして、でも、彼女には妻帯者の恋人がいて、でも、気にせず、アタックして、でも、その妻帯者の恋人はおじさんで、なんていうベタなお話なのに、ドラマチックとは無縁なタッチで描かれていく。なんだか不思議な映画なのだ。監督が老人であるウディ・アレンだからなのかもしれないけど、まるでガツガツしてないのがいい。傷心の彼はひとりニューヨークに戻り、地道に別のおじさん(ではなく、兄)が経営するナイトクラブで働くことになる。そこで成功して、素敵な女性と出会い結婚もするのだが・・・ 再び彼女が夫(おじさん、ね)とニューヨークにやってきて・・・
こんなふうに、ストーリーをなんとなく、書いてしまったけど、この映画の魅力は、一応そんなこんなでドラマチックな展開を見せるのに、まるでテンションは上がらないところにある。淡々とふたりの恋を描いて、あきらめではないのに、それどころか恋は再燃するのに、まるで切なくはなく、でも、割り切った大人の関係とかでもなく、終わっていく。なんか枯れた映画なのだ。でも、そこがとてもいい味わいで僕は好き。