この映画は今回の「ロマンポルノ・リブート」5作品のラストを飾る作品だ。掉尾を飾るのは中田秀夫である。その選択は悪くはないはずだった。なのに、これはいったいどういうことだろうか。
今回のこの企画、とても楽しみにしていた。僕には恥ずかしながらロマンポルノの終盤10年くらいをコンスタントに見続けたという自負がある。あの情けない気分は見た人でなくてはわからない。劇場に入る瞬間の暗い気分、3本見た後のもっと暗い想い。生きているのがつらくなるほど、人生を無駄にしている気分。でも、10本に1本くらい見てよかった。と思わせてくれる作品に出合えた時の快感、自分は決して間違ってはいなかったのだ、なんてそんな大げさな気分になる。あの後ろ暗さ。今回、どんな形で「日活ロマンポルノ」がよみがえるのか、ワクワクしていた。それだけにほんとなら5本とも見たかった。なのに、結局これしか見れなかった。なのに、唯一見たこの映画がこれでは残念としか、言いようがない。
だいたいロマンポルノなのだから、せめて2本立で、上映してくれたならよかったのに、と思う。(今の時代3本立ては望めまい)それなら2本は見れたのだ。低予算で上映時間も短いのだから、それを1本ずつで上映しなくともいいじゃないか、と思う。これってなんか詐欺みたい。条件だけがロマンポルノのまねで、上映は今の映画のまま。
しかも、もっと作家主義の作品なのかと思っていたら、なんかとてもゆる~い映画で、あまり必要性の感じられないポルノシーンをいっぱい入れた安直な作品で、これがリブートなのかと思うと、がっかりする。(ほかの4作品はそうじゃなかったのかもしれないが)過去のロマンポルノの傑作に匹敵するくらいのものを5人の監督が作る、というのが本来のねらいだったはずなのに、これでは形骸化された似非ロマンポルノでしかない。
この作品は、今回監督たちの中で唯一ロマンポルノの現場を知る中田秀夫だからなのかもしれないが、確かにこれはロマンポルノ風の作品にはなっている。だけど、だからこそ、そこがつまらないというのはどういうことか。
話がゆるすぎて、あまりに締まりがない。お花の師匠と弟子の話なんていうのもなぁ、と思う。あまりリアリティのない映画で、嘘くさい。今の時代にこういうものをわざわざ作る意味はない。こんな中途半端な映画を、ロマンポルノの再生として提示されても無残なだけだ。見終えてなんだか悲しい気分になった。