京都を舞台にしてそこで暮らす3姉妹の日々を描く作品。帯には綿矢りさ版『細雪』、とあるが、そんな大仰なものではない。長さも250ページくらいとコンパクト。保育師の長女、OLの次女、大学院生の三女。それぞれがそれぞれの人生の大事な局面に臨み、そこから新しい旅立ちをしていく姿が綴られる。20代後半から30歳という、いろんな意味で微妙な年齢に立つ彼女たちが、自分をみつめる話。
出会いのない毎日に苛立つ長女は、30歳に入って焦り始める。妹から職場の先輩を紹介され、結婚を前提とした付き合いを始める。奔放な性格の妹(次女)は敵が多い。職場の人間関係で苦しい立場に立たされている。下の妹は全く男性と付き合うこともなく、ここまできたけど、本人はまるで気にしてない。そんなことよりも研究者として社会人となり、就職することが望みだ。京都を出て東京に行こうとしている。でも、両親は反対している。
そんな3人の生き方は全く誰とも似ていない。それは当然彼女たちひとりひとりのものだ。しかし、そんな3人の姿を追っていくうちに、そこに誰もが心当たりのある出来事が見えてきて、彼女たちに共鳴する。そこに自分たちと似たものを感じる。
生きていたらきっとぶつかることになるものが、そこには見え隠れしている。もしかしたらあまりに些細すぎて、見逃してしまいそうなこと。そんなことのひとつひとつを乗り越えて生きていく。目の前の問題としっかりと向き合い、乗り越えていこうとする3人の姿がすがすがしい。
京都ならではの風物詩も織り込みながら、ここは古い町でなんだかとても生き辛い、でも、このすてきな町で、生きていく。京都だなぁ、としみじみ思うことがあちこちで目に付く。それがやっぱりめんどくさくて、すごくうれしかったりして、なんとも不思議な気分にさせられる。とても気持ちにいい小説だった。