こんな未来は嫌だ。誰もがそう思うはず。SF映画のおもしろさは世界観の造形にある。高層マンションの林立する世界で(そんなのは未来ではなく、今だってそうだし、今この窓の目の前にも20階くらいまであるマンションが見えている)底辺の世界と、上の世界に分断された世界で起きている出来事を富裕層の側から描く嫌みな作品。
ここに描かれる未来は今としっかりつながっている。とてもリアルな近未来の世界。そして、そんな世界がたった3ヶ月で簡単に崩壊することが描かれる。ということは、今ある僕たちのこの世界だって同じだろう。システムエラーで崩壊する。自然災害で崩壊する。それは未来ではなく、近過去のことでもある。
ここに引っ越ししてきたひとりの男の今を見せた後、遡って引っ越しの日からの数ヶ月を淡々と見せていくだけ。それが怖い。傑作だというわけではないけど、この世界を目撃し、いろんなことを感じさせられる。不思議な体験だ。彼が探検するこのコミュニティの理想と現実。『ブレードランナー』の昔から、地上世界は貧困で、そんな吹きだまりのことなんか、高層世界の富裕層には関係なかった。だが、足下がフラフラしている世界は簡単に崩れていく。おぞましい風景も、さもありなん、で終わる。
とても面白かったし、怖かったけど、あっけない。バラードの原作で、これだけビジュアルにも頑張ったのに、残念だが、それ以上のものがない。仏作って魂入れず、なんて、ね。