今年のHPF、ウイングフィールドでのトップバッターはHPF初出場の池田高校演劇部。初参加なのに、とても落ち着いたステージを作る。まるで物怖じしない。それどころかなんだかベテランの雰囲気で、驚く。冷静に自分たちが選んだ作品(きっと既成戯曲なのだろう)と向き合い、この作品の特性を生かし、この場所の特性も生かして、安定した芝居を提示した。なんだか、クールで、観客の僕のほうがドキドキした。
5人の役者たちも、手慣れた感じで上手い。でも、そのぶん、新鮮さがない。台本はよく出来ている。ミステリータッチで、なかなかネタバレしない。なのに、舞台上のタイトルのNが、横になった瞬間、すべてが明らかになる。なんともおしゃれな仕掛けだ。
目覚めたら独房に入れられていて、記憶を失っていた男。そこに侵入者。彼からいろんな話を聞く。ここはどこで、どうして自分はこんな場所にいるのか。刑務所なのだろうが、よくわからない。脱獄を試みるが難しいようだ。
オチが単純でそれ以上の恐さがないのがもったいないけど、丁寧にこの作品世界を表現して、75分、最後まで飽きささないのは凄い。