習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『プレステージ』

2007-06-18 05:49:13 | 映画
 『メメント』のクリストファー・ノーランに見事に騙されてしまった。この手口を鮮やかというべきか、それとも「それはないんじゃないの」と呆れるべきかは、かなり微妙なラインだ。

 ただ、『メメント』の時のようなあざとさはない。これは確信犯である。これで勝負をしてきた以上、しっかりこの禁じ手込みのカードを受け止めて評価するしかあるまい。(『メメント』に関して僕は、あれはスタイルに逃げた、と理解している。)

 瞬間移動というトリックについて、とんでもない大嘘を設定している。しかし、それはありだ、と認めさせた上で、そのためのルールも含めてとても丁寧に嘘のない設定を作り上げている。
 何よりも主人公2人の潰し合いをどこまでも、どこまでも徹底的に見せ、エスカレートさせていくので、騙されたとしても腹が立たない。『Xメン』のヒュー・ジャックマンと『バットマン』のクリスチャン・ベールが、知恵と知恵、力と力で激突するのだから、どんな無茶なことをやっても観客は納得してしまうのかも知れない。(と言いつつも、今回はスーパーヒーローではなく、ただのマジシャンなんだから、んな訳ないけども)

 複雑に絡み合ったストーリーをテンポよく見せていく演出の切れのよさも含め、さすが編集の達人ノーランらしい。一瞬も目が離せない緊張感が持続する。いくつも仕掛けられたトリックは、小さなものから始まり、ラストの大仕掛けまで、そして、さらにその向こうにある、もうひとつ飛び切り小さな仕上げ技のトリックまで、よく練られてある。さすがに今はその内容については一切書けないのが残念だが、コピーにある「目を凝らせ。見逃すな。」といった惹句がこけおどしでないのは見事だ。

 好き嫌いはあるし、僕はこのタイプの映画は本来あまり好きではないのだが、この映画がとてもよく出来ているという事実を認めないわけにはいくまい。まんまとしてやられた。

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