こういう弱い人間が肩寄せあうようにして生きていく姿を描いた作品を偶然続けて読んだのか、それともこういう話がちょっとしたブームなのか、よくは知らないが、この作品を読みながら、心地よさと居心地の悪さを同時に感じた。変な気分だ。
主人公のハルさんは人形作家だ。家から出ないで生活している。彼と娘のふうちゃんのお話である。ふたりきりでずっと暮らしてきた。瑠璃子さんが亡くなってから男手ひとつでふうちゃんを守って生きてきた。何かがあると彼は天国の瑠璃子さんに話しかける。すると彼女が答えてくれる。彼女ならどう言うか、考える。すると答えが出る。
ふうちゃんの結婚式の日にこれまでの日々を回想していく、というスタイルで語られる5つのエピソード。園児の頃、小学生の頃、中学生の頃、そして、高校時代、大学時代。とても分かりやすい。ほのぼのとした作品だ。しっかり者のふうちゃんと、おっとりしたハルさんの話は、とても暖かいが、あまりに甘く、こんなのありえないと思ってしまうのは、ひねくれた人間だからか。
実は、市川拓司の『ぼくの手はきみのために』に続いて読んだため、そのあまりの軟弱さに辟易させられた。まぁ市川拓司のほうはいつものことだから、もうなんとも思わないが。
こういう弱い者たちが、いたわりあいながら肩寄せ合い生きていくのを見ていると涙が出そうになる。でも、それにしてもここまで同じような小説ばかりよく書けるなぁと感心もする。精神的にも身体的にもひとりでは生きていけない男女が世の中の片隅で消え入りそうになりながらも、息をひそめて生きている。
幼い頃からずっと一緒に暮らしてきた男女が、自然にそのまま愛し合い男と女として永遠に一緒の時を過ごす。そんな夢のような話を一途な愛の物語として見せるのではなく、そうしなくては生きていけないとてつもなく弱い心と心の物語として描く。彼らには選択肢なんてない。だけど、それは彼らの絶対条件である。彼らはそうしか生きれない。それだけである。だけどそれは確かに幸福なことだと思う。
伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』は軽い読み物としてとても面白い。ホラ話すれすれの物語は彼の独壇場であろう。特に飛行機の中でヒーローになる数学教師のエピソードの終わらせ方がいい。「これで終わり?」と思わせるのもいい。よく出来ているとは思う。でも、そこまで。それ以上でも以下でもない。ミステリー仕立てできちんとオチがつく。その分、読んだ後に何も残らない。そこがこの人の限界かもしれない。
今、森見登美彦『きつねのはなし』を読んでいる。『夜は短し歩けよ乙女』に続く新刊である。今回はしっとりとしたホラータッチの作品に仕上がっており、前作のような衝撃はないが、理不尽な物語は前作同様で、決して単純な怪奇譚にはならないのもいい。続いて彼のデビュー作『太陽の塔』を読む。
4月は10冊しか読めなかった。映画、芝居同様少し少な目だが、何分1年で1番忙しい時期なのだからしかたない。
主人公のハルさんは人形作家だ。家から出ないで生活している。彼と娘のふうちゃんのお話である。ふたりきりでずっと暮らしてきた。瑠璃子さんが亡くなってから男手ひとつでふうちゃんを守って生きてきた。何かがあると彼は天国の瑠璃子さんに話しかける。すると彼女が答えてくれる。彼女ならどう言うか、考える。すると答えが出る。
ふうちゃんの結婚式の日にこれまでの日々を回想していく、というスタイルで語られる5つのエピソード。園児の頃、小学生の頃、中学生の頃、そして、高校時代、大学時代。とても分かりやすい。ほのぼのとした作品だ。しっかり者のふうちゃんと、おっとりしたハルさんの話は、とても暖かいが、あまりに甘く、こんなのありえないと思ってしまうのは、ひねくれた人間だからか。
実は、市川拓司の『ぼくの手はきみのために』に続いて読んだため、そのあまりの軟弱さに辟易させられた。まぁ市川拓司のほうはいつものことだから、もうなんとも思わないが。
こういう弱い者たちが、いたわりあいながら肩寄せ合い生きていくのを見ていると涙が出そうになる。でも、それにしてもここまで同じような小説ばかりよく書けるなぁと感心もする。精神的にも身体的にもひとりでは生きていけない男女が世の中の片隅で消え入りそうになりながらも、息をひそめて生きている。
幼い頃からずっと一緒に暮らしてきた男女が、自然にそのまま愛し合い男と女として永遠に一緒の時を過ごす。そんな夢のような話を一途な愛の物語として見せるのではなく、そうしなくては生きていけないとてつもなく弱い心と心の物語として描く。彼らには選択肢なんてない。だけど、それは彼らの絶対条件である。彼らはそうしか生きれない。それだけである。だけどそれは確かに幸福なことだと思う。
伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』は軽い読み物としてとても面白い。ホラ話すれすれの物語は彼の独壇場であろう。特に飛行機の中でヒーローになる数学教師のエピソードの終わらせ方がいい。「これで終わり?」と思わせるのもいい。よく出来ているとは思う。でも、そこまで。それ以上でも以下でもない。ミステリー仕立てできちんとオチがつく。その分、読んだ後に何も残らない。そこがこの人の限界かもしれない。
今、森見登美彦『きつねのはなし』を読んでいる。『夜は短し歩けよ乙女』に続く新刊である。今回はしっとりとしたホラータッチの作品に仕上がっており、前作のような衝撃はないが、理不尽な物語は前作同様で、決して単純な怪奇譚にはならないのもいい。続いて彼のデビュー作『太陽の塔』を読む。
4月は10冊しか読めなかった。映画、芝居同様少し少な目だが、何分1年で1番忙しい時期なのだからしかたない。