2時間半、2部構成の大作だ。小劇場の芝居を見る、というよりも、ふつうの商業演劇を見ている気分だ。最初からそういう芝居を作る覚悟だろうし、というか劇団往来ならそんなこと簡単に出来る。贅沢な舞台は普段見る小劇場の芝居とは違う。よくある商業演劇仕様の作品なのだ。(僕は、そういうのはほとんど見ないけど)
確かによく出来ている。お話も悪くはないし、堂々たるタッチでラストまで飽きさせない。バイロン卿とシェリーとのお話に、彼女が書いたモンスターの悲劇を劇中劇として挟み込み、そのふたつの物語を重ね合わせ、愛されずに生まれた男の悲劇を描く。彼が「モンスター」と呼んだ人造人間を、彼女は「名前のない男」と呼ぶ。その両者の意識の違いが最後、どこにたどりつくか。
母親の愛を知らない男(バイロン、ね)は、女をモノとして扱うことで母親への復讐をする。美しい詩を書く詩人であるにも関わらず、人間としては最低の男。
自分が何者なのか知らない男(要するに、俗に言う「フランケンシュタイン」ね。この役を元OSKの桜花昇ぼるが演じる。カッコいい)は、なぜ自分がこの世に生まれたのかを知るため、自分の存在する意味を求めて、創造主、自分を生んだ男を捜し出し、最後は殺そうとする。
「どうして自分を作ったか。」これがこの作品全体のテーマとなる。彼を作った男は、母親の死を乗り越えるため永遠の命を求めただけだ。赤ん坊の頃、棄てられていた女は、そんな彼と一緒になり家庭を作ることを夢見る。
自分という存在を揺るがす「恐怖」を見つめる。人はどこから生まれてきてどこにたどりつくのか。複数の人物のいくつものお話が交錯して一つの物語を形作る。
ただ、全体があまりに大味で、パターン通りの展開になるのが、残念だ。ただの悲劇ではなく、その先にある彼らの孤独をもっと掘り下げたい。