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映画・演劇のレビュー

無名劇団『ハッスル☆ライフ』

2016-12-31 01:00:46 | 演劇
チラシにあった解説は強烈だった。「祖母と私」を描くということはそこにちゃんと書いてある。でも、あれだけ見たらもっと凄まじいお話を想像した。しかし、実施の芝居はもう少しマイルドなタッチになっている。太宰治の『走れメロス』を引用して、目的に向かって全力で走りぬけていく少女の人生を描く島原夏海の自伝的作品。



祖母と本人との関係を題材にしたのだが、それを劇団員と話し合いアレンジして台本とした集団創作。(脚本名義はいつも通り、みずしまみほこ。)誰もが心当たりのある家族との相克が描かれる。それを幼いころから大人になった今までの長い歳月を背景にして5人の女優がリレー形式で演じていく。メロスを絡めて見せていくというのはいつもの中条岳青による「無名稿」シリーズのタッチを踏襲したのか。ただ、今回は直接お話自体をアレンジするわけではなく、あくまでも話自体は孫と祖母の二人暮らしの家族において、たったひとりの孫娘に過大な期待を寄せる祖母と、彼女の期待に応えようとして心を病んでしまう主人公という図式でみせる。



タスキを渡すようにして、5つの時代を5人が演じることで、このお話が個人的な想いではなく、どこにでもあるひとりの女の内面の確執を描く普遍性を勝ち取ることが出来た。とても個人的なものにこだわることの弊害を回避した。



いい子ちゃんを演じること(祖母の望むとおりの完璧な孫娘を実現する)という使命は、太宰にも通じる。だが、そこには必要以上に踏み込まない。だが、この作品は太宰と私で押し通しても面白かったのではないか。全体のバランスはあまり良くない。



ふたりの自分が向かい合って対話したり、対決したりするシーンも含めて、いくぶんあざとい作り方にもなっているけど、とても真面目でストレートな作品に仕上がっていて好感が持てる。いつものようにスタイリッシュな空間造形で、独自の世界を展開しようとしたのもいい。芝居自体はちょっと甘いけど、これはこれでいい。
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