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映画・演劇のレビュー

『ポッピンQ』

2016-12-31 00:59:06 | 映画
東映動画(東映アニメーション)60周年記念作品である。歴史あるスタジオの還暦祝いとなる新作としては少し残念な作品だ。大予算の超大作を期待したのではない。お祭り的な作品ではなくてもいい。だけど、60年の伝統を受け継ぐ、そして未来へむけての記念碑的な、そんな作品であって欲しかった。でも、この作品では、わざわざ「60周年記念作品」という冠をつける意義を感じない。



ただ、確かに東映アニメらしい作品ではある。善と悪がはっきりしていて、美少女たちが変身して戦うという『セーラームーン』や『プリキュア』の流れを汲んだ作品で、そこは今の東映アニメらしい。ただ、それがここで必要だとは思えない。



今年の映画界(敢えて「アニメ界」とは言わない)は『君の名は。』の年だったが、この作品があの作品に匹敵する出来になっていなくては、(本当なら、)いけないのではないか。スタジオ・ジブリ亡き後、東映アニメーションがアニメ界を牽引する。そんな心意気を見せて貰いたかった。でも、これでは今年数あるアニメ映画のなかで、でも、出色とすら言えないのは事実だろう。





14、15歳の少女たちのお話だ。中学卒業を目前にした別々の場所で暮らす5人たち。彼女たちが夢の世界に落ち込む。今の映画のパターンならもっと5人のそれぞれのキャラを立たせて、ちゃんとドラマを描き込んでから異世界に誘うはず、なのだが、この作品は、そこを簡潔に見せてすぐに別世界に向かわせる。そこは時のはざまにある世界で、そこで彼女たちは世界を救うために戦うことになる。(でも、アクションではなく、ダンスを踊るのだけど)



95分という上映時間もお手ごろで、昔の東映動画の60分から70分の時代のボリュームだ。複雑なお話ではなく、単純で子供でも理解できる。それぞれの状況の中で心を閉ざした5人が、同じ場所に連れて来られて同じ使命を受けて、仲間となり戦う。



いろんな意味で中途半端な作品になっている。これでは子供も、オタクも楽しめないのではないか。ターゲットがわからない。予想通り興行は惨敗である。なんだか、悲しい。
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