
新人監督の作品で、小松菜奈と松田龍平が主演。ふたりとも久しぶりの主演作になる。彼らが選んだ作品だからと楽しみにして見に行ったのだけど、残念な映画だった。あまりに素朴でストレートな語り口に戸惑いを隠せない。どこに作者の意図があるのかもわからない。若い作家の独りよがりの観念世界と切り捨てていいものかに躊躇う。美しい映像と棒読みのセリフ。ここには感情はない。
富名哲也監督・脚本、編集による自主映画にこれだけのキャストが集まった。映像は美しいが、話がない。観念的な映画だが、内容は何もない。死者たちが暮らす場所。名前も記憶も失って、自分が何者なのかわからない。そんな彼らはこの佐渡の金山跡で彼らは過ごす。心中したふたり(小松と松田)もここに来た。こちらで再会したが生前の記憶はもちろんない。だけど自分たちはもう死んでいるという認識だけはある。キイに拾われた彼女はミドリと名付けられる。キイの家には幼いアカとクロがいる。再会した彼は自分は名無しだというから、アオという名前を授ける。
だけど、それがどうした? この映画には大切な「その先」がない。こういうスタイルだけに終始して、ええカッコしただけの表層的な映画は勘弁して欲しい。それでも作るというのなら、せめてアラン・レネの『去年マリエンバードで』レベルまでは行ってください。とても不快だった。