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映画・演劇のレビュー

劇団往来『わがババわがママ奮斗記』

2013-06-21 22:46:23 | 演劇
2部構成2時間半の大作仕様になっているのだが、内容的には1時間半で収まる。作品のスケールと上演時間はちゃんとリンクしたほうがいい。意味のない大作仕立ては作品自体の持つテイストをゆがめる。軽いタッチのコメディ仕様なのに、こういうボリュームにしたため、作品が間延びして、緊張感のないものになった。

介護の問題を扱い軽やかに見せるというのは、悪くないアプローチなのだ。しかし、問題は深刻なものも孕んでいるから取り扱いには気をつけなくてはならない。

ラストのハッピーエンドはそれでいいのだが、本来これは深刻な問題であり、こんなふうに簡単な解決にはならない。そんなことは重々承知したうえで、でも、みんなが力を合わせたなら、なんとかなる、という安易ともとられかねない終わらせ方を選択したのだ。そこにはきちんとした作り手の覚悟があるはずである。

だから作品の方向性に関しては問題ない。だが、最初にも書いたように、あまりに作りが緩い。間延びした描写と、ストーリー展開を何とかして欲しい。観客はボリュームのある芝居を期待しているのだろうが、そこは内容と相談して、今回はスピード感のあるものを目指すべきだった。キャストを絞り込んでいるのだから、だらだらした見せ方をせず、母親と娘の対立、和解という中心を成すドラマを周囲との関係の中で、もう少し突き詰めるべきだ。似た者同士の2人が、お互いのわがままを貫くことで、お互いを尊敬し、信頼する。そこからしか、彼女たちに未来はない。やがて、人は老いていく。自分ひとりの力では生きられない。だからといって、自分を抑えて、生きるのはつまらない。わがまま言う。でも、甘えない。そういう相互の関係性をどこまで大事にできるのかが大切で、それは自分勝手ではない。

要冷蔵演じるタツは往年の「意地悪ばあさん」のコピーで、笑える。シリアスになる題材を彼女(!)の演技でワンクッションさせ見せる。彼女と向き合うことになるこの芝居の主人公である洋子とその娘である智美の1対2の対立図式も悪くはない。どちらかを悪者にするのではなく、どっちもどっちという展開もいい。

それだけに、こういう無駄なシーンだらけで、本筋からすぐにそれる集中力を欠く作り方はしないほうがよかった。乃木貴寛さんの前説は、悪くはないけど、長いし、2部の最初にもあるのはどうかと思う。あれでは作品に集中できない。


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