冷たい風があたる西側で、 まだクレオメ(西洋風蝶草)が咲いていた。 花のつきかたも面白いし、細いひげが舞うようで印象的。 ピンクの小さな花がところどころ白んで縮れ、花の終わりを告げている。
いまだ強い西日に守られてきたのだろう、 よそでは見かけない。 花の下に、八方にひろがる細い刀のような実。 そのふくらんだ莢に触れると、待ってましたとばかりに弾けた。
夏の終わりにたくさん集めたナガミノヒナゲシの種は、 砂粒よりもさらに小さく、さらさらと地面に落ちた。 クレオメは少し大きく、菜種くらいか。
ルーペでよく見れば一粒ずつ、「の」の字にくるっと巻いている。 虫みたいだが、種のじっと待つ姿だと思えばほほえましい。 しかも大きさ1.5㎜。 なんといとしい。 莢の長さ35㎜ みつめながら白秋の詩を思い出していた。
人知れず袖に涙のかかるとき、
かかるとき、
つひぞ見馴れぬよその子が
あらせいとうのたねを取る。
ちやうど誰かの為スるやうに
ひとり泣いてはたねを取る。
あかあかと空に夕日の消ゆるとき、
植物園に消ゆるとき。
「雪と花火」より 「あらせいとう」
どこか哀しくなる。
あらせいとうのたねを取る のフレーズがとくに好き。
「あらせいとう」 竹久夢二の絵のように、なつかしく響く。 これがストックだと知ったときの驚き。
季節の花300さんによれば、 ストック 別名 紫羅欄花(あらせいとう) 葉が、ラセイタ (毛織物の一種(raxa))。ポルトガル語 ではラセイタと呼ぶ) に似ており、 そこから「葉ラセイタ」 →「アラセイタ」 →「アラセイトウ」に変化した。