ドアの向こう

日々のメモ書き 

春の雨

2006-02-16 | 自然や花など

 やわらかな雨が降っている。 人のこころにも、 若い緑にもやさしく降りかかる春の雨。 

    我が背子が衣はる雨ふるごとに野べの緑ぞいろまさりける    紀貫之

 ひと雨ごとにかわる季節、 うつろいをこまやかな眼でとらえたことば。 春の雨に注目した。 
  以下に、 「雨の名前」 高橋順子より引用する。

 木の芽雨 コノメアメ 春、木の芽どきに降る雨で、その成長を助ける雨。木の芽が柔らかくふくらむことを「木の芽張る」という。

    霞たち木の芽はる雨きのふまでふる野の若菜けさは摘みてん   藤原定家

 育花雨イクカウ。 梅若の涙雨… 謡曲「隅田川」の主人公梅若の忌日とされる陰暦3月15日に降る雨のこと。   春雨ハルサメ。 雪解雨ユキゲアメ。
甘雨カンウ、 膏雨コウウ …「膏」はうるおう意。慈雨 など呼ぶ。草木にやわらかく降りそそぐ、烟ケブるような春の雨。
 杏花雨キョウカウ…杏の花が咲く頃に。 草の雨、山野に萌える草たちにけむるように降りそそぐ。 紅の雨、つつじ、しゃくなげ、桃や杏などに時をかさねて降る雨。 
春雨シュンウ… 冬が明けて心身ともに弾むころ降る雨。 桜の頃には花時雨、 花の雨。 

          ☆

 美しい雨のなまえ、 季節それぞれ風情もちがう。 雨の大きさ、強さ、色、匂い、時間。 情緒たっぷりですてきな呼び名には、 こまやかな眼差しがうかがえた。 このほかにも土地柄でついた名前などたくさんあった。

 少しの雨なら傘などいらない。 熱い心でぬれて歩こう。
 暗くなって街灯のもとで気づく。 セーターのうぶ毛のような一本一本に、 小さな小さな雨粒がひかっていた。 どきどきした。

 春の雨はせつない思い出までつれてくる。
コメント
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