ドアの向こう

日々のメモ書き 

街のにおい

2006-02-11 | 道すがら



 浅葱色の空…  眼下のパッチワークがぼやけてパステル画に変わるころ、ベルト着用サインが消えました。香港、チェクラップコク国際空港まで約4時間半。 
 次男に会いにゆく三泊四日のひとり旅です。

 空港から東へ40分、住まいは九龍紅○カオルーン・ホンハムにあります。(ハムは石偏に勘の字、むずかしい) 2月21日、気温24℃、湿度72%、エレベーターの中で蒸した鶏の匂い。 これねえ、この街の匂いは。 ぐるりマンション、どこを向いても高層ビルの林。 おどる洗濯物。
 喧噪の中ひしめく人達、わからない広東語。 まるで、牛や豚や、香辛料と私を一緒くたにして、ミキサーにかけたように過ぎました。

 にぎやかな看板や広告、二階バス。 似て非なアジアの人々・欧米人、 ここは人種のるつぼです。 慣れてくるから不思議ね。 騒々しさや雑多な臭いが、今はなつかしい。
 歴史の跡、かさなる文化、バイタリティーあふれる眠らぬ場所。 湾の向こうに香港島が見えます。

 ヴィクトリア・ピークへトラムで行く。急勾配で、ビルは頭のうえへ倒れこむように迫ってくる。そのたび歓声が飛ぶ、笑みがこぼれる。 乗客たちは顔を見合わせ、ずっと前からの知り合いのようだ。

 終点から、 さらに山頂へと歩く。 街灯も人影もまばらで、用心棒がいてうれし。 やがて広がるひかりの海。 おびただしい宝石やビーズを留め、さざめき、きらめき流れ、フーガをかなでるよう。

 あの頃は…   漆黒の闇
 「ぬばたまの夜霧の立ちておほほしく 照れる月夜の見れば悲しさ」 と詠う坂上郎女に、この輝きはどのように映るでしょうか。
 「その女瞬マバタキの数いと多く秋の灯火トモシビ見る心地すれ」 と吉井勇。

 こちらは、愉しく豪華なまばたきに溺れ、夜10時、30過ぎの子とあるく。
 「結婚はまだ? それを聞かなきゃ帰れないわよ」 「心配しないで」
 海老チリをまえに息子は饒舌。 外国で会うのもいいものね。いつもと違う顔を見て…

          -☆-

 『私は勢いよくカーテンを引き開けた。
 と、そこには、すぐ目の前に今にも崩れ落ちそうな高層アパートがそびえるように立っているではないか。 その建物もまたその隣の建物に接するように立ち、いやすべての建物がコンクリートの林の中で視界を失なうほど密集している』 深夜特急・沢木耕太郎より

 まるでそっくり、このとおりのシーンに幻惑する。 頭も体も熱かった旅。 隣りの窓がすぐそこに開いている。 部屋の様子もうかがえる。 人影はいったり来たり。 子は喧噪のただなかに、目をぎらぎらさせて生きていた。 

 『皆さま… 間もなく成田到着でございます…  空港は霙…  気温1℃でございます…』   
 お土産は 茉莉花茶をどうぞ        (2003記)

コメント
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