これほど じっくり 牡丹を眺める年はなかった。 絵にも描いた。
多くの写真を撮し、 ひとに自慢し、 喜んでもらえた。
そして、 中里恒子さんにであった。
気品と豊艶な容姿にほれぼれすることがある。 … あこや貝のようにうすく光った外側の花弁が中側はあかくぼかしになり、 葉いろも美しい。
花の活け方は…
女の襟足をみせるように 花つきの萼の部分を、 すっと枝からほどよく見せるのが上乗と聞いている。 初々しく高貴で品の良い色気、 そういったものをたった一輪の花が象徴している。
品の良い色気…
雨になりそうで、 終いの花を折ってきた。 中里さんの牡丹の花びらに、 小さな虫が休んでいた。 やわらかな花びらが ぱっと崩れて 二片 三片… 目の前で うちかさなった。
何れの花か散らで残るべき。 散る故によりて、咲く頃あれば、珍らしきなり。 風姿花伝
このまま庭で 雨に打たれる方が良かったか、 花のこころを模索する。