少女の頃、 伯父が飼っていた七面鳥と暮らした。 私を見つけると、 尾羽を扇のように広げ、 翼を地面すれすれに下げて、 引きずりながらザーザーと音を立てて追いかけてきた。 大きな躯、 蜆色の羽で、 派手なディスプレーをする。 雄叫びを上げ猛スピードで突進した。 体長約120㎝、 重そうなからだを揺らし、 羽をふるわせ、 頑丈な足でタタラを踏む。 彼は短気で、 怒りっぽいのである。
とくに女性は、 近くを通っただけで追い回された。 母や伯母たちまで。
頭の飾りを膨らませて、 がらがら声を発しながら何年にもわたって踏み固めてきた求婚場を もったいぶった歩き方で行ったり来たりするのである。(平凡社 動物大百科7)
百科事典も なかなか文学的だ。
七面鳥は頭には毛がなく凸凹していた。 彼の風貌について、 克明な描写がある。
… 七面鳥の乳頭ニップルの色は ここに置かれた静物の光沢に似てゐる。 あの頭の疣イボは首から上が濃い皺ばんだ牛乳いろで不透明なところに、 碧ミドリが斑で真向から嘴のうへに下がってゐる朱の垂り肉が伸びたり縮んだりする。 けろけろと啼くときはその肉が長くなって激しく揺れる… 「風景は動く 白い家禽 北原白秋」 より 抜粋
淡い虹色をしていたと思う。
平福百穗 ヒラフク ヒャクスイの「七面鳥」もある。 もう一度見てみよう。
農場には、 犬も、猫も、 蜜蜂も、 鶏も、 綿羊や駝鳥さえいた。
駝鳥は背が高く足も速く、 卵はにわとりの何倍か、 白味はこってり重くて、 お箸で掬ってもほどけない程で簡単にかき混ぜられやしない。
濃厚な味? 黄味も特大。 七人の子供たちは(従兄弟五人に私と弟) 固唾を呑んで見守った。 一個でもフライパン一杯分の大きさの、 もの凄い目玉焼きが出来たが、やはり大味だった。
(調べると 重さ約1.2kg、ニワトリの卵の20~25個分に相当、おとなの手の平くらいの大きさだって) 殻も固かった。
おかげで、 面白い子供時代を過ごせた。 クリスマスが近づくといつもおもいだす。 プレゼントなどなかったけれど、 無口なおじさんのあったかい大きな手と、 七面鳥の顔。
駝鳥と同じ空間で遊んだ思い出や、ましてその卵を食べたことがおありといった経験が、”虫めづる姫君”の基盤になっていますね。
歓声を上げて駆け回る幼い日の蛙さんの目の輝きが浮かびます。
ぼろぼろの羽を唄った詩人がいましたね。
私は今とは逆で、幼い日は製鉄所で賑わう雑多な繁華街が遊び場でしたので、夏休みの間をずっと過ごす母の田舎が楽しみでした。朝から蝉取りです。蜂の巣をつついて大騒ぎになったこと、川で遊んでいて流されたことなど、いまだに従兄弟たちが集まるとからかわれています
七面鳥は、ブラジルで飼われているのを見たことがあります。やはり広々とした農場でした。もっぱら食べられるために飼われていたので、色鮮やかな頭を振りたてるのがなにか哀しげに見えたものです。
やさしかったおじさまの思い出は大切な蛙さんの宝物ですね。
蜜蜂にはしょっちゅう刺され、顔はお岩さん、目が開かない状態です。 今だに面影が…
気取った足取りの七面鳥、 何羽かいたくらいです。感情移入して、身近すぎて食べたことはありません。
ぼろぼろの羽を唄った詩人… 知りたいです。 いよいよ押し詰まって参りましたね。