2月は15冊読みました。
「このミス」他、昨年末のミステリー本のランキングから6作品。
◆マーダーズ(長浦京)
著者の作品は「リボルバーリリー」についで2冊目ですが、似たような感じの話でした。市井の商社マンなのにやたらと強い、刺されても、撃たれても、中々死なないタフな主人公や現実味の薄いストーリーも、そこはまあエンタメ作品ということで。荒唐無稽のピカレスク・ミステリーでした。
◆潮首岬に郭公の鳴く(平石貴樹)
郭公と言えば托卵ということで、タイトルから養子になった健二が絡んだ犯罪と勝手に決めつけて読み始めましたが、意外な犯人に「そっちですか!」とびっくり。トリックはピエール君の一気の謎解きで分かったのですが、動機については「そんなことで殺す?」。本格ミステリーにありがちな、トリック以外の小説部分がちょっと。。。ま、そこは横溝正史的な地方の旧家ではありかなと思うことにしました。
◆早朝始発の殺風景(青崎有吾)
以前著者の「図書館の殺人」を読んで、意味不明の殺人の動機やただひたすらややこしい殺人のトリックに、なるほどこれが「本格」というやつかと辟易した記憶あり。本作は打って変わって米澤穂信さんを思わせる青春日常系ミステリー。「早朝始発の殺風景」「メロンソーダ・ファクトリー」「夢の国には観覧車がない」「捨て猫と兄妹喧嘩」「三月四日、午後二時半の密室」、5編の短編はどれも良い。注意力、観察力って、大切。
◆予言の島(澤村伊智)
昨年末の「本格ミステリ」7位作品。「ん?澤村さんが本格ミステリ!?」と違和感を持って読み始めました。お得意のホラー展開も「ヒキタの怨霊」の正体が早々に判明、これでは「本格」ではなく普通のミステリー、このままでは終わらないよなと思っていたら、最後に猪突過ぎるどんでん返し。これは全く気が付けない、「二度目はホラー」の帯も「なるほどそういうことかよ」と納得。読み返したら伏線がみつかるのでしょうが、読み返す気にはならないなー。
余談ですが、澤村伊智さんって男性だったんですね。何となく女性の方かと思っていました。
◆ノースライト(横山秀夫)
文春ミステリ心血を注いで設計した家に住むはずだった家族の失踪を市井の一建築家が追う。からっぽの家にのこされたタウトの椅子を手掛かりに失踪家族を捜す。謎解きもだが、青瀬らの建築に対する情熱が熱い。
◆真実の檻 (下村 敦史)
著者の作品は「闇に香る嘘」に続き2作目。母の遺品から、父とは血のつながりは無く、実の父は母の両親を殺害した死刑囚であることを知ってしまった大学生の洋平が、冤罪を信じて過去の凄惨な殺人事件の謎を追うミステリー。日本の警察、検察制度の問題と冤罪をつくりだしてしまうメカニズム、話がよくできすぎちゃっている感はあるものの、中々に重たい話でした。
◆熱源(川越 宗一)
第162回直木賞受賞作。ヤヨマネクフ、シシラトカ、プロニスワフ、バフンケ、チェフサンマ、皆実在の人物なんですね。歴史小説として読みました。アイヌに限らず、北米のインディアンも南米のインディオも、生活環境を変えられて疫病で人口を失い、差別を受け同化を強いられてアイデンティティを失う、先進国中心の文明社会に弱肉強食の自然淘汰を強いられた、悲しい衰退の歴史がここにあります。100年前の日本で起きていたこと、エンタテインメント色は薄めだけど、心打たれるものがありました。
ー1位、このミス、ミステリが読みたい2位、本屋大賞ノミネートと評判が高い本だったので、大いに期待して読み始めた。前半がやや冗長に感じたが後半は圧巻、ミステリーというよりも普通に小説として面白かった。
◆むらさきのスカートの女(今村夏子)
第161回芥川賞受賞作。「むらさきのスカートの女」という近所で有名な奇人を、その彼女のストーカーが語る。スカートの女が日野さん、まゆさんと次第に実在を取り戻し、平凡な女になっていくにつれ、語り部の黄色のカーディガンの女の奇妙さが膨れ上がり、しまいには取って代ってしまう。不気味さ、哀しさ、可笑しみを含んだ平易な文章で、ラストはなるほどうまいなと思った。表紙の不思議な画も納得。
◆あひる (今村夏子)
著者の作品は、「星の子」「むらさきのスカートの女」に続いて3冊目。なるほどこういう作風の方なのですね。淡々とした、平易な文章に潜む不気味さ、不思議さと少しばかりの可笑しみ。なんか、尾を引く作風の作家さんです。
◆20 CONTACTS 消えない星々との短い接触
(20 CONTACTS:A Series of Interviews with Indelible Stars)(原田マハ)
日本人と日本と関係の深かった外国人の芸術家20名との邂逅の心象風景を原田マハさんが描写する。故人なので果たしてどんな人だったのか知るすべはないのだが、なるほどそういう人だったんだと思うことにする。原田さんが持っていったお土産が中々に興味深い。
ラノベが4冊。
◆青春ブタ野郎は迷えるシンガーの夢を見ない (鴨志田 一)
新シリーズ1作目はづっきー回。不可視化、タイムループ、人格入替り、解離性障害、いろいろあった思春期症候群だけど、今回は今までで一番地味目。「空気を読める」って、ファンタジー色ゼロ、単なる青春小説になったのかと思ったら、ようやく霧島透子登場で、やはり思春期症候群は健在みたいで。。。よくわかんないけど「青ブタ」ファンとしては次作に期待、でしょうか。
◆りゅうおうのおしごと! 12 (白鳥 士郎)
ツンデレ・ロリの天衣ちゃんがついに宣戦布告、八一のハーレム・バトルに参戦です。一方で八一と晴れて両想いとなった銀子は死闘の末ついに四段昇進。でも、それよりもなによりもかっこいいのは鏡洲さん、今回は鏡洲さん回と言っていいでしょう。創多も生意気なガキと思ったら割といい奴でよかったよ。京香さん回でも思ったけど、白鳥さん、頑張り続ける脇役にもしっかり焦点をあててくれるので、ラノベなのに心にジーンときます。
◆この空の上で、いつまでも君を待っている (こがらし 輪音)
初読みの作家さん、19年のカドフェス本だったので手に取った。夢を見れない少女と夢ばかりみている少年のボーイミーツガール物語、中盤からありがちな方向に大展開で、最後はちょっと無理やり感。でも、まあ、楽しく、軽く読めました。
◆アサシンズプライド 暗殺教師と無能才女 (天城ケイ)
12月に終了したTVアニメが面白かったので。高貴な伯爵家に生まれながらマナを発現できず不義の子と疑われるメリダの元へ、暗殺の密命を受けて家庭教師として送り込まれたクーファ。しかしメリダの健気さに心を打たれたクーファは命を懸けてメリダを守ることを誓う、というかなり厳しい設定のお話なのだが、とにかくメリダがかわいいので良し。
絵本が1冊。
◆それしか ないわけ ないでしょう (ヨシタケ シンスケ)
昨年に続き「読メ×ダヴィンチ」BOOKOF THE YEARに入っていたので、どんなもんかと手に取ってみた。なるほど、大人の鑑賞に応え得る絵本と思います。
「このミス」他、昨年末のミステリー本のランキングから6作品。
◆マーダーズ(長浦京)
著者の作品は「リボルバーリリー」についで2冊目ですが、似たような感じの話でした。市井の商社マンなのにやたらと強い、刺されても、撃たれても、中々死なないタフな主人公や現実味の薄いストーリーも、そこはまあエンタメ作品ということで。荒唐無稽のピカレスク・ミステリーでした。
◆潮首岬に郭公の鳴く(平石貴樹)
郭公と言えば托卵ということで、タイトルから養子になった健二が絡んだ犯罪と勝手に決めつけて読み始めましたが、意外な犯人に「そっちですか!」とびっくり。トリックはピエール君の一気の謎解きで分かったのですが、動機については「そんなことで殺す?」。本格ミステリーにありがちな、トリック以外の小説部分がちょっと。。。ま、そこは横溝正史的な地方の旧家ではありかなと思うことにしました。
◆早朝始発の殺風景(青崎有吾)
以前著者の「図書館の殺人」を読んで、意味不明の殺人の動機やただひたすらややこしい殺人のトリックに、なるほどこれが「本格」というやつかと辟易した記憶あり。本作は打って変わって米澤穂信さんを思わせる青春日常系ミステリー。「早朝始発の殺風景」「メロンソーダ・ファクトリー」「夢の国には観覧車がない」「捨て猫と兄妹喧嘩」「三月四日、午後二時半の密室」、5編の短編はどれも良い。注意力、観察力って、大切。
◆予言の島(澤村伊智)
昨年末の「本格ミステリ」7位作品。「ん?澤村さんが本格ミステリ!?」と違和感を持って読み始めました。お得意のホラー展開も「ヒキタの怨霊」の正体が早々に判明、これでは「本格」ではなく普通のミステリー、このままでは終わらないよなと思っていたら、最後に猪突過ぎるどんでん返し。これは全く気が付けない、「二度目はホラー」の帯も「なるほどそういうことかよ」と納得。読み返したら伏線がみつかるのでしょうが、読み返す気にはならないなー。
余談ですが、澤村伊智さんって男性だったんですね。何となく女性の方かと思っていました。
◆ノースライト(横山秀夫)
文春ミステリ心血を注いで設計した家に住むはずだった家族の失踪を市井の一建築家が追う。からっぽの家にのこされたタウトの椅子を手掛かりに失踪家族を捜す。謎解きもだが、青瀬らの建築に対する情熱が熱い。
◆真実の檻 (下村 敦史)
著者の作品は「闇に香る嘘」に続き2作目。母の遺品から、父とは血のつながりは無く、実の父は母の両親を殺害した死刑囚であることを知ってしまった大学生の洋平が、冤罪を信じて過去の凄惨な殺人事件の謎を追うミステリー。日本の警察、検察制度の問題と冤罪をつくりだしてしまうメカニズム、話がよくできすぎちゃっている感はあるものの、中々に重たい話でした。
◆熱源(川越 宗一)
第162回直木賞受賞作。ヤヨマネクフ、シシラトカ、プロニスワフ、バフンケ、チェフサンマ、皆実在の人物なんですね。歴史小説として読みました。アイヌに限らず、北米のインディアンも南米のインディオも、生活環境を変えられて疫病で人口を失い、差別を受け同化を強いられてアイデンティティを失う、先進国中心の文明社会に弱肉強食の自然淘汰を強いられた、悲しい衰退の歴史がここにあります。100年前の日本で起きていたこと、エンタテインメント色は薄めだけど、心打たれるものがありました。
ー1位、このミス、ミステリが読みたい2位、本屋大賞ノミネートと評判が高い本だったので、大いに期待して読み始めた。前半がやや冗長に感じたが後半は圧巻、ミステリーというよりも普通に小説として面白かった。
◆むらさきのスカートの女(今村夏子)
第161回芥川賞受賞作。「むらさきのスカートの女」という近所で有名な奇人を、その彼女のストーカーが語る。スカートの女が日野さん、まゆさんと次第に実在を取り戻し、平凡な女になっていくにつれ、語り部の黄色のカーディガンの女の奇妙さが膨れ上がり、しまいには取って代ってしまう。不気味さ、哀しさ、可笑しみを含んだ平易な文章で、ラストはなるほどうまいなと思った。表紙の不思議な画も納得。
◆あひる (今村夏子)
著者の作品は、「星の子」「むらさきのスカートの女」に続いて3冊目。なるほどこういう作風の方なのですね。淡々とした、平易な文章に潜む不気味さ、不思議さと少しばかりの可笑しみ。なんか、尾を引く作風の作家さんです。
◆20 CONTACTS 消えない星々との短い接触
(20 CONTACTS:A Series of Interviews with Indelible Stars)(原田マハ)
日本人と日本と関係の深かった外国人の芸術家20名との邂逅の心象風景を原田マハさんが描写する。故人なので果たしてどんな人だったのか知るすべはないのだが、なるほどそういう人だったんだと思うことにする。原田さんが持っていったお土産が中々に興味深い。
ラノベが4冊。
◆青春ブタ野郎は迷えるシンガーの夢を見ない (鴨志田 一)
新シリーズ1作目はづっきー回。不可視化、タイムループ、人格入替り、解離性障害、いろいろあった思春期症候群だけど、今回は今までで一番地味目。「空気を読める」って、ファンタジー色ゼロ、単なる青春小説になったのかと思ったら、ようやく霧島透子登場で、やはり思春期症候群は健在みたいで。。。よくわかんないけど「青ブタ」ファンとしては次作に期待、でしょうか。
◆りゅうおうのおしごと! 12 (白鳥 士郎)
ツンデレ・ロリの天衣ちゃんがついに宣戦布告、八一のハーレム・バトルに参戦です。一方で八一と晴れて両想いとなった銀子は死闘の末ついに四段昇進。でも、それよりもなによりもかっこいいのは鏡洲さん、今回は鏡洲さん回と言っていいでしょう。創多も生意気なガキと思ったら割といい奴でよかったよ。京香さん回でも思ったけど、白鳥さん、頑張り続ける脇役にもしっかり焦点をあててくれるので、ラノベなのに心にジーンときます。
◆この空の上で、いつまでも君を待っている (こがらし 輪音)
初読みの作家さん、19年のカドフェス本だったので手に取った。夢を見れない少女と夢ばかりみている少年のボーイミーツガール物語、中盤からありがちな方向に大展開で、最後はちょっと無理やり感。でも、まあ、楽しく、軽く読めました。
◆アサシンズプライド 暗殺教師と無能才女 (天城ケイ)
12月に終了したTVアニメが面白かったので。高貴な伯爵家に生まれながらマナを発現できず不義の子と疑われるメリダの元へ、暗殺の密命を受けて家庭教師として送り込まれたクーファ。しかしメリダの健気さに心を打たれたクーファは命を懸けてメリダを守ることを誓う、というかなり厳しい設定のお話なのだが、とにかくメリダがかわいいので良し。
絵本が1冊。
◆それしか ないわけ ないでしょう (ヨシタケ シンスケ)
昨年に続き「読メ×ダヴィンチ」BOOKOF THE YEARに入っていたので、どんなもんかと手に取ってみた。なるほど、大人の鑑賞に応え得る絵本と思います。
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