ブラスカル

元マラソンランナーですが、今や加齢と故障でお散歩専門、ブラタモリっぽく街歩きをしています。

8月に読んだ本

2015-09-01 00:11:27 | 読書
「新潮文庫の100冊」「ナツイチ」「カドフェス」挑戦中です。
今月は26冊でした。

新潮文庫、13冊も読んでしまいました。

◆なきむし姫 (重松清)
重松さんにしては随分と軽めの話を書いたものだな。
それにしても、たった1年の単身赴任で大騒ぎしてちゃだめでしょ。かなりレベルの低い、アヤの成長物語でした。
留美子みたいな親は再起不能にしてやればよいのに。
ケンとナッコにはちょっと泣かされました。

◆ナイフ (重松清)
同じ重松さんの「新潮文庫の100冊」だけど、これはまた「なきむし姫」と随分違うシリアスな話。「ワニとハブとひょうたん池で」「ナイフ」「キャッチボール日」「エビスくん」「ビタースィート・ホーム」の短編5編。
いじめられている現実を認めたくない、親に知られたくない、いじめられる側の心理が問題を助長させる。弱い子供を認めたくない親が問題をこじれさせる。
特に「ナイフ」「キャッチボール日和」はつらい話。でも「エビスくん」みたいに長じれば笑って話せることもある。決して楽ではないけれど、必ず救いはあるはずだから。

◆切羽へ (井上荒野)
直木賞受賞作。
牧歌的で保守的な田舎を舞台にした匂い立つような大人のプラトニックラブ。
しずかさんの淫夢に戸惑う周囲がなんとも淫靡。
最近、「くちびるに歌を」「風に立つライオン」「沈黙」「ばらかもん」、五島列島が出てくる小説やらアニメやらをやたらと見ているような気が。偶然? 方言が小説の雰囲気にあっていて、良かよ。

◆野火 (大岡昇平)
この話が事実に基づくものなのか、創作なのかは置いておくとして、世の中には実に意味のない非人間的状況があるものだなと思う。
これは戦争の本質などではない、目的を見失った無知、無能によって作り出された状況である。
そこそこのインテリで冷徹に周囲の人間を分析している田村一等兵自身が、判断力を喪失している。後日にメタ視点で書かれた小説だからなのか、私にはとても読みづらかった。

◆白いしるし (西加奈子)
うーん。理解できない。夏目の心情、男だから理解できないのだろうか。

◆かもめのジョナサン: 【完成版】 (リチャード・バック)
学生の頃読んだが、話の内容は完全に忘れていた。こんな話だったんだ。
冷戦とベトナム戦争、軍産複合体による管理社会と疎外感、そんな当時の米国社会の雰囲気に風穴をあけた童話といったところでしょうか。仏教というか、東洋哲学っぽいところも米国で受けた原因でしょう。
これが日本でもヒットしたということは、当時の日本もまたそんな時代だったということ。時代の産物って感じ。
著者もさほど難しく考えて書いていないように思えるので、自由に解釈したらよいのではないでしょうか。とすると四章はやはり蛇足っぽいかな。

◆春琴抄 (谷崎純一郎)
昔、山口百恵と三浦友和で映画になりましたよね、って、古すぎるか。こんな話だったんだ。
壮絶なドMとドSの倒錯愛です。私には理解できません。
最後の方の種明かしで、やっぱり最初の子も佐助かいということになるわけですが、そこまでやってて、でも結婚はしない、もう見栄じゃない、真正SMです。
芸事も、最後の方は二人とも相当の腕前になっていたようですね。針で目をって、嫌です。そこが一番ぞっとしました。

◆大人のための残酷童話 (倉橋由美子)
確かに童話や昔話には残酷な側面があったり、寓話性のほとんどないものもあります。
今絵本になっている童話は、子供たちが喜ぶように書き直されたものが多い。一番良い赤ずきんちゃんの本を選んであげたいって、庄司薫の「赤頭巾ちゃん気をつけて」のそんなエピソードを思い出しました。
「人魚姫」「白雪姫」「世界の果ての泉」とかは、ちょっとだけ面白かったかな。

◆奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき (ジル・ボルトテイラー)
脳科学者ともなると、脳卒中になっても、まるで哲学者か自己啓発セミナーの講師の方のようです。
脳卒中といっても、たんに意識レベルとか身体機能が低下するのではなく、複雑なことが起こるものなのですね。改めて人間の脳の神秘的なまでの素晴らしさを感じます。
著者の前向きな姿勢に感動。もし身の回りの人が脳卒中になったとき、あるいは自分がなったときの参考にします。

◆残るは食欲 (阿川佐和子)
料理は全くできない私ですが、阿川さんの軽妙な文章、楽しく読ませていただきました。
自分は子供の頃すごい偏食で、食わず嫌いのものがたくさんあったのですが、長じるにつれ自然と克服し、今はけっこうなんでも食べてます。
昔はトマトもあのぐじゃぐじゃしたところが嫌で食べられなかったし、すいかもシイタケも阿川さんと同じような理由でダメだった。でもホヤは今でもダメ、今度挑戦してみようかな。

◆沈黙 (遠藤周作)
普通の人と視点の違う感想になるが、日本人の無宗教はこの江戸時代の政策でつくられたのかなと思った。
信長が比叡山を焼き討ちし、一向宗と戦い、秀吉、家康もキリスト教も西洋の先進技術のみを受け入れた後はあの手この手で弾圧する。
為政者以外の絶対的価値観を認めない政策は、昭和の一時期に暴走した以外は概ね機能し、原理主義的な宗教観が以降芽生えず、悲惨な宗教戦争が起こることはなかった。
情熱の宗教家に対する神の沈黙と奉行・井上の功利的な説得、換骨奪胎してしまう日本文化、私は普遍的に正しいものなどないと思っています。

◆深夜特急〈1〉香港・マカオ (沢木耕太郎)
95年から99年まで仕事で香港に駐在してました。その時は1香港ドル15円くらい、その20年前は60円だったのですね。
出てくる地名や通りの名前一つ一つまでもすべて懐かしい、スターフェリー、私も大好きでした。ゲストハウスは重慶大厦っぽい?魔窟みたいなところだけど、おいしいカレー屋さんがあって時々行ってました。
僕の時も、猥雑で熱気あふれる香港はこの本そのままだったけど、徐々に、でも日本の何倍ものスピードで、それが新しいものに塗り替えられていく、そんな時代でした。大好きな街香港、ただただ懐かしく読みました。

◆旅のラゴス (筒井康隆)
筒井さんらしい、不思議でロマンチックな小説でした。
文明がすっかり衰退してしまった未来世界で、ラゴスの旅は、ポロで先祖が残した書物を読むということが目的と思っていたけど、またはその知識をふるさとの街に持ち帰ることが目的なのだと思っていたけれど、そうでもない。
ラゴスの成長が留まることを許さなかったのか、それとも根っからの旅人なのか、不思議な世界での壮大なお話、銀鉱あたりからぐいぐい引き込まれ、一気読みでした。

集英社文庫の「ナツイチ」が5冊。

◆エンジェルフライト 国際霊柩送還士 (佐々涼子)
少し前に、web版の日経ビジネスで木村利恵さんのインタビュー記事を読んで、えらい仕事をしている人がいるもんだなーって思ったところでした。
私も駐在員時代に中国を車で移動することが多かったのですが、交通マナーが悪く、事故が多発する。車の運転に必要な最低限の道徳心もない運転手に自分の命を委ねねばならない理不尽さを感じていましたので、この話、他人事には思えませんでした。
木村さんみたいな人がいてくれるのは心強いです。企業戦士の骨、ぜひ拾ってやってください。

◆チーズと塩と豆と (角田光代,森絵都,江國香織,井上荒野)
角田光代「神様の庭」、井上荒野「理由」、森絵都「プレノワール」、江國香織「アレンテージョ」、女流直木賞作家4名による、ゆっくりと時間が流れる欧州の田舎を舞台にした、料理や食卓にまつわる連作。
1年以上積読していたのだが、なかなかに面白かった。角田さん、森さんのはともに亡き母の想いが感じられる秀作。江國さんのゲイのカップルの話だけちょっと意味不明。

◆マスカレード・ホテル (東野圭吾)
さすがの安定の面白さでした。
ちょっと冗長な感じがする全般で、ホテル業務の全般を説明するとともに、一見関係なさそうな事件に後半の核心部分の伏線がちりばめられている。ページ数の多さはあまり気にならずに、一気に読んでしまいました。

◆マスカレード・イブ (東野圭吾)
「マスカレードホテル」の続編ということで読んでみたが、続編と言っても前日譚で、マスカレード・ホテルの二人の再会を期待していたので肩すかしでした。
「それぞれの仮面」「ルーキー登場」「仮面と覆面」「マスカレードイブ」の短編が4編。表題作の二人のニアミスがじれったい。

◆夏休み (中村航)
表紙と題名から高校生の話かなって思ってたら全然違った。女同士の友情と男の付き合い。人生を左右する決断が格闘ゲームですか。何とも言えない軽妙な可笑しみのある、楽しい作品でした。

角川文庫「カドフェス」も5冊。

◆炎上する君 (西加奈子)
直木賞作家・西加奈子さん、初読みだったのですが、こういう作風の方だったのですね。
人とのつながりが希薄な現代社会において、でも何かをきっかけにアイデンティティーを確立して、前向きに歩いていこうみたいなものを底流にした、表現力豊かで、ユニークで、ユーモアあふれる作品群とでもしておきましょうか。
これって何のメタファー?とかあまり難しく考えずに、面白い、元気出たで良いのかも。
解説、今を時めく又吉さんですね。すごいしっかりして、分かりやすくて、文章力があって、びっくりしました。

◆退出ゲーム (初野晴)
初野晴さん初読み、米澤穂信さんの古典部シリーズみたいな感じ。文化部で部活そっちのけの学園ミステリーで、個性的で元気な高校生が出てきて、、、これもハルチカシリーズ、シリーズものになっているみたいですね。
それと来年1月からTVアニメ化だそうで。古典部シリーズ同様、納得の出来栄えでした。

◆ナミヤ雑貨店の奇蹟 (東野圭吾)
いつも緻密な東野さんが、これまた随分と脇の甘いタイムパラドックスを書いたものだな。
結末もお約束という感じ。でも、これはこれで読後感は悪くありませんでした。
ナミヤ雑貨店に絡んだ、丸光園という共通項を持った人たちの人生が、時代を超えて手紙でつながる。時にはこういう隙だらけの人情ものも良い。

◆さいはての彼女 (原田マハ)
「さいはての彼女」「旅をあきらめた友と、その母への手紙」「冬空のクレーン」「風を止めないで」、原田マハさんお得意の、旅にまつわる短編4編。
美術と旅を愛する原田さんだけど、美術をテーマにした小説のあのマニアックさとは違って、旅を語るときの原田さんは、まっすぐ前向きで、人情味にあふれれて、単純明快です。

◆僕の好きな人が、よく眠れますように (中村航)
人妻と不倫という設定にもかかわらず、現実味のない小説でした。
こんだけ好きになれば、まず離婚だよね、順序として。
北海道に帰れば旦那に求められるでしょう。山田を好きになってしまったメグは当然拒む。そうすればどうしてってことになって、あとは修羅場ですよね、普通。それとも、何食わぬ顔して夫婦をやって、裏でせこせこメールを打っているのかな。
それでいきなり山田が乗り込んで来たら、旦那もいい迷惑だな。なんて、こんなレビューを書くこと自体、中村航さんの術中にはまってる?
少なくとも「100回泣くこと」よりは面白かったです。

大好きなシリーズの最新刊、久々にライトノベルを手に取ってみました。
◆なれる!SE (13) 徹底指南?新人研修 (夏海公司)(電撃文庫)
橋本さんが表紙なので、今回は橋下文月回かと思ったら、そうでもなかった。梢さん、立華、カモメさんにリシーと橋本さんを加え、ますますハーレム展開の予感。それにしてもドラッカーの「マネジメント」を彷彿とさせる工兵くんの人材操縦術、あいかわらず半端ない優秀社員振りです。この本、どの巻読んでも仕事のヒントになる。

本格SFを1冊。
◆星を継ぐもの(ジェイムズ・P・ホーガン) (創元SF文庫)
「長門有希の100冊」。アニメ「長門有希ちゃんの消失」でこの本が出てきて、そうだよねー、読まなきゃと思った次第です。
一応ハントさんが主人公なんだろうけど、ハントさんのキャラ設定とかプライベートな出来事とか、そういうのは一切なく、ただただ月で発見された5万年前の人類の死体から、後半一気に話が展開していく、一切遊びのないハードコアなSF。スケールも壮大。
これが40年近くも前に書かれたものとは!後半は一気読みでした。
謎解きも衝撃で、さすがという感じ、文句なしに今年読んだSF小説のNo.1です。

ずっと積読になっていたのを読んでみました。
◆インシテミル (文春文庫)
12体の人形、クリスティの名作「そして誰もいなくなった」を思わせるクローズドサークル設定です。
殺害された人がでて、この中の誰かが犯人ということになる。疑心暗鬼による殺人か、それとも明確な殺意を持った人間がいるのか、閉じ込められた12人の心理状態の推移が面白い。
探偵不在のミステリーでしたが、終盤は結城くんが意外な探偵振りを発揮。
そもそも何のための暗鬼館?設定自体は無理目ですが、ミステリーとしてはよく出来てました。

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