ブラスカル

元マラソンランナーですが、今や加齢と故障でお散歩専門、ブラタモリっぽく街歩きをしています。

「逆説の日本史」18、黒船来航と開国交渉の謎

2015-09-06 13:29:28 | 読書
井沢元彦さんの「逆説の日本史」も18巻目、いよいよ幕末です。

黒船来航と開国、私は、確かに日本はペリーの砲艦外交に屈したが、その結果、為政者としての能力を失っていた幕府は倒れ、明治維新が成り、日清・日露の戦争に勝利したのだから、結果オーライではと思っていました。
しかしながら、でもやはり、幕府の無策が原因で日本が失ったものはあまりに大きいということを再認識しました。

何を失ったかと言えば、関税自主権と金。
関税なしでのいきなりの開国は、初心者がハンデなしで有段者と将棋を打つようなもの。
このおかげで、明治政府は、不平等条約の改正に明治末年まで苦労し、他の政策で様々な譲歩をせざるを得なくなった。

当時の日本は黄金の国ジパング、大判小判の金貨が普通に貨幣として流通するくらい、金を保有していた。
これを有効に使えば、明治政府は容易に最新鋭の軍備を輸入し、一気に富国強兵、文明開化ができたはずだった。
豊富なゆえに国際相場の1/4くらいだった日本の金は、うまく為替レートを設定、銀との両替を操作され、国外流出させてしまった。

黒船は突然来航したのではなかった。その50年以上前から、ロシアとアメリカは度々日本を訪れ、開国交渉をしていた。
一方で英国は中国でアヘン戦争、アロー号事件を引き起こし、武力行使で植民地支配を推進していた。
国際情勢からみて開国は避けられず、それなら友好的なアメリカ、ロシアと条約を結んで、以て英国と対抗すればよい。アメリカは英国の植民地から戦争で独立を勝ち取った、関係を結ぶには適当な国である。
日本はオランダと200年以上にわたる友好関係があったのだから、彼らから外交を学べば、この程度のことはすぐわかったはずだし、開国時の条約交渉でも負けることもなかったはず。
ところが実際の歴史は、再三差し伸べられたオランダの手をはねつけ、本拠のない楽観論に終始して問題を先送り、交渉相手には二枚舌を駆使して詐話を繰り返し信用は失墜、この結果、最初は友好的だった米国をして砲艦外交に走らせ、これに屈して紳士的に日本の返事を待っていたロシアをも怒らせてしまう。
平和ボケとはここまで危機管理能力を失くすものなのか。

開国か攘夷かと言えば、武力で圧倒的に負けているのに、日本に入った外国人は皆切り殺せの攘夷は明らかに不正解。
しかしながら、そのどうかんがえても正論の開国を唱える人を、勤皇、佐幕関係なしに問答無用で切ってしまったのが当時の攘夷。
そのテロリストの首魁が水戸斉昭、徳川御三家の一つ、水戸徳川家の当主にして幕府の外交顧問その人なのだから話にならない。

でも、今の人も、江戸幕府を笑えない。
今も「日本国憲法は祖法でござれば」みたいなことを言う政治家や知識人は掃いて捨てるほどいる。
安保法案に反対するのであれば、中国の領海侵犯や北朝鮮のミサイルにどう対応するのか、具体的なビジョンがなくてはならない。
「とにかく嫌だから反対」では当時の小攘夷の輩と一緒だし、「もっと友好的な方法があるはずです」「話し合いで解決すべきです」では、当時の江戸幕府と何にも変わらない。

歴史から学ばないと。



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