パリから90km南西に位置するこの町は13世紀の大聖堂が旧市街の中心に聳え立ち、パリからの日帰り旅行に最適とあり、バス一台分の日本人団体客を見かけた。
キャンプサイトから川沿いに3km、まず目に付くのは聖ピエレ教会と天を突く2つの尖塔を持つノットルダム大聖堂。川沿いからだと急な坂道が大聖堂へ向けて延びている。川沿いの道は石畳がきれいで、川すれすれに各家庭の小さな庭があり花畑や川辺にカヌーを横付けにしているところもある。
河には約100メータおきに立派な石造りの橋が架かっている。狭い道を車が行き交い、キャンパーでは絶対通れそうに無い。
河に突き出た土台をもつ聖アンドレ教会は閉まっていたため、ここから急な階段を登って大聖堂へ向かった。
奥行き130メータの大聖堂内は素晴らしいステインドグラスに覆われている。これらのほとんどは13世紀からのオリジナルで、ヨーロッパでも重要な中世の芸術品にあげられる。観光客以外には一人の僧も見えず、パイプオルガンの音も聞こえず、静まり返っていた。
高さ105mの塔に登りたいと思っていたのに、色彩鮮やかなステインド・グラスを百枚近くも写し満足したので、すっかり忘れてしまった。
大聖堂から北へのゆるいくだり道は観光客用のお店とレストランが並んでいるが半数以上が閉まっていた。その先は噴水が並ぶ広場で風が冷たい。
ここでサンドイッチを食べて腹ごしらえした後町の散策。歩き回っている間に見つけた観光案内所で地図を貰い、キャンプサイトへの近道を教えてもらった。
ゆっくり坂道を下ってくる途中に見つけた聖エニヨン教会はルネッサンス時代の建物で内外とも古く、彩色された柱や木製の天井が、なんとなくノアの箱舟の中を想像させる。16世紀のステインドグラスの中に旧約聖書のストーリーが絵になっているのがあり亭主とこれはアダムとイヴ、これはモーゼの十戒などと話していたら,教会のお花を生けていたおばさんがパンフレットなどくれ、フランス語で説明してくれた。全然判らなかったけれど、彼女の親切にはお礼を言って出て来た。
すぐ近くに聖ピエレの巨大な教会があり、人気の無い教会内を歩き回りここでも素晴らしいステインドグラスを何枚も写してきた。
今年の英国は本当に天気が悪かった。10月末は2週間以上毎日雨が降らない日が無かった。
過去3年は寒い英国の冬から逃げ出して暖かなスペイン・ポルトガル南部で越冬することにしている。
出かける前には一応庭の手入れや、こまごまとした準備が要る。雨のため草刈は出来ないし、垣根が伸び放題、とうとう予定を4日も延ばしてやっと垣根だけは整えたが、草刈は専門の庭師に頼むことになった。11月と3月に手入れをしてくれるそうだ。本物の庭師だから料金も高いが、帰って大騒ぎしなくてもいいだろうし、娘の庭を管理してくれている庭師だから信頼が置ける。
中等教育(11歳から18歳まで)の学校教師の娘は土曜日から一週間ニューヨークへ行った。私たちは日曜日に我が家を出発して、月曜日の朝フェリーでドーバーからフランスのカレーへ渡った。この頃ニューヨークはハリケーンが荒れに荒れて洪水・停電・火事・家屋崩壊と大惨事になっている。ハリケーンの影響は大西洋を越えて英国や北ヨーロッパにも強風と豪雨をもたらしている。我が家を出て水曜日まで毎日雨と霧や雨雲立ち込めるうっとうしい日々だった。
今年はカーナビもスクリーンが大きくキャンプサイト情報が何万か入っていると言うのを買ったが、使い慣れていないため、カーナビに使われているような気がする。初日のアベビル(Abbeville)のサイトは昨年も停まったところだけれど、カーナビにいいようにあしらわれて遠回りしてやっと着いた。
翌日もいつもは遠回りで行かないルーアン(Rouen)へ連れてゆかれ、連日の大雨でトンネルが通行止め、散々走り回ってやっとたどり着いたところが初めに行った通行止めの道路だった。これであせりの亭主は怒り心頭、いつもは使わないF-wordの連発。もー本当に嫌になった。
やっとシャートレ(Chartres)のサイトへたどり着いた頃から空が明るくなり久しぶりに太陽が拝めた。ここでも”連日の雨でキャンパーの駐車地はぬかるんで車が埋まるからどこでも好きなところに停めていいよ” とのこと、舗装された通路に停まって一夜を明かした。
朝からすっきりと青空、朝日がきらきら梢の葉に反射している。こんな日はゆっくりキャンプサイトの周囲を散歩したり、町へ観光に行ったりしたいものだ。サイトから旧市街までは片道3kmと言う。サイトは林に囲まれた素敵な環境、落ち葉を踏みしめ、紅葉した木の葉や色着いた木の実が美しい。サイトの裏の川はたっぷり水をたたえ、若者たちがカヌーやボートを漕いでいた。
町の入り口にはこの町の守護聖人・ブライス(Saint Brice)の像が立っていた。宗教音痴の私にはこの聖人が何をしたのかわからない。
真っ赤なメイプルの葉やOld mans beard(おじいさんのひげ)等ここフランスも秋たけなわ。こうして素晴らしい秋を楽しめる今日も健康ならこそ。