とくおかレディースクリニック~ブログ~

日々、徒然なるままに、書き込んで参ります。
どうか宜しくお付き合い下さい。

9月のラボ便り その2

2023年09月08日 | ラボ便り

9月のラボ便り

本日は、9月5日にアップしました「9月のラボ便り その1」の続きを書かせて頂きます。
是非とも「その1」をお読みになられましてから、こちらをお読み下さいね。


卵子は、成熟することで染色体(遺伝情報が入った体の設計図のようなもの)の数を減らし、
精子の染色体を受け入れられるようになります。

染色体はヒトの体の細胞の全てに存在し、
元々は同じ長さのものが2本対となり、23組で46本あります。

GV期・M I期の卵子も23組46本の染色体を持っており、
成熟してMII期になると極体という小さな染色体が入った細胞を放出し、
違う長さの1対23本のみの染色体を持った状態になります。

そこに、同じように違う長さの1対23本の染色体を持った精子が入り、
卵子由来・精子由来それぞれの染色体がペアになって23組46本になります。

それぞれの染色体が組み合わさったことで、
新しい染色体の組み合わせを持った細胞が誕生するのです。
これが「受精」です。

受精が成立すると、
卵子の中には卵子由来と精子由来の2個の前核(遺伝情報が入ったもの)が出現します。

これを確認することで正常に受精が行われたかの判定をします。

前核が3個以上見られるものは異常受精です。
卵子の中に精子が複数個入ってしまった場合や、
元々卵子の染色体の数に異常がある場合などに起こります。
前核が1個しか見られない際は、異常受精・正常受精どちらの可能性もあります。
精子が卵子の中に入っても何らかの原因でどちらかがうまく前核を作れなかった場合や、
卵子だけで前核を作ってしまった場合は、異常受精です。
卵子と精子の前核が融合して1個になっている場合は、正常受精です。

何かご不明な点がございましたら、スタッフまでお声がけ下さい。


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9月のラボ便り その1

2023年09月05日 | ラボ便り

9月のラボ便り その1

皆様こんにちは。
9月に入り、暦上では秋になりましたが、まだまだ暑い日が続きそうですね。
引き続き熱中症には気をつけていきましょう。

今回のラボ便りでは、「卵子の成熟」についてお話します。

卵子には「成熟卵」と「未熟卵」があります。
「成熟卵」は、受精の準備が出来ている卵子
「未熟卵」は、受精の準備が出来ていない卵子です。
「未熟卵」は、体外受精・顕微授精で精子と出会わせても受精が起こりません。

卵子はその成熟度によって、
GV期→M I期→M II期という順に時期が変化していきますが、
受精が可能な成熟卵はMII期のみです。

体内の卵子は、最初はGV期の状態です。

卵子が入った卵胞が、
卵胞を育てるホルモンであるFSHの影響を受けて発育し、
十分に発育した際に起こるLHサージ(排卵を起こすホルモンLHの大量分泌)の影響を受け、
GV期の卵子はM I期、M II期と成熟します。
そして、LHサージの影響で排卵が起こり、
卵管内で精子と出会うと受精が起こります。

体外受精・顕微授精の場合は、
排卵して卵巣から卵子が出てしまうと、
卵子を体外に取り出せませんので、
排卵が起こる前に採卵手術を行います。

卵子の成熟は受精の為に必須ですので、
LHサージをしっかり起こすためにブセレリン点鼻薬や、hCG注射を用います。

次回は「9月のラボ便り その2」に書かせて頂きますね。

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8月のラボ便り その2

2023年08月22日 | ラボ便り
8月のラボ便り その2

先日の続きを書かせて頂きますね。

奇形精子率が増えてしまう原因としては、以下のようなことが考えられます。

・精索静脈瘤
精子を使っている精巣を温めてしまう精索静脈瘤がある場合、
その治療を行うことで奇形精子率が改善されることがあります。

・長期間の禁欲
禁欲期間が長くなると、貯蔵されている精子の状態が悪くなり、死んでいきます。
更に、死んだ精子が生きている精子にダメージを与えるといわれています。
奇形精子率が増えるだけでなく、運動精子率も下がります。

・生活習慣
睡眠不足や食生活の乱れ、喫煙など。
近年、過度な飲酒も影響するといわれています。

・過度なストレス

しかし、原因不明な部分も多くあり、
奇形精子を改善する為の治療方法というのは存在しないのが現状です。

奇形精子は、染色体異常を持っている可能性や、運動性が低い為に、
受精まで至らない可能性が高いとされています。

ですので、奇形精子率が高い場合は、タイミング治療や人工授精、体外受精では妊娠率が低く、
顕微授精の適応になることがあります。

しかし、奇形精子が必ず染色体異常を持つ、受精が出来ないというわけではありません。
精子の数が極端に少なく奇形率が高い患者さんで、
正常形態精子が確認出来ないような場合であっても、
顕微授精によってご妊娠・ご出産まで至る例はあります。

何かご不明な点がございましたら、スタッフまでお声がけ下さい。


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8月のラボ便り その1

2023年08月21日 | ラボ便り
8月のラボ便り その1

皆様、こんにちは。
少し外に出ただけでも、体力を奪われるような暑さですね。
皆様、くれぐれも熱中症にはお気をつけ下さい。

今回のラボ便りでは、「精子の形態」についてお話します。

ヒトの精子は、おおよそ縦3μm横5μmの楕円形の頭部に約40〜50μmの尾部が付いており、
頭部と尾部の間には運動の為の機関である中片部が存在します。
いわゆるおたまじゃくしのような形をしています。
他の動物の精子も頭部・中片部・尾部から成るところは同じですが、
頭部の形は動物の種類によって異なります。
ヒトのように楕円形ではなく、鎌状の頭部を持つような動物もいます。

ヒトは、他の動物と比べて様々な形の精子を持つ=奇形精子の割合が高いとされています。
同じ方が同じ時に射精した精液の中でも、
楕円形ではない頭部を持つ精子や尾部が折れているような精子が多く存在するのです。

精液検査を行う際は、
WHO(世界保健機関)によるマニュアルで定められた正常形態精子以外の形のものを、
奇形精子として判断しています。
そのマニュアルによると、
検査下限値(一年以内にパートナーが自然妊娠に至った男性の精液所見から定められています)は、
正常形態率4%以上、つまり奇形精子率は96%以下です。
また、年々奇形精子率は増加傾向にあり、
1996年には85%だったものが2010年には96%になっています。

次回は規制静止が増えてしまう原因をご説明させて頂きますね。

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7月のラボ便り

2023年07月14日 | ラボ便り
7月のラボ便り

皆様、こんにちは。
暑い日が続いておりますので、水分補給をしっかりとして過ごして下さいませ。

今回のラボだよりでは、「アシステッドハッチング(AHA)」についてお話させて頂きます。

受精卵は受精後5〜6日目に胚盤胞になり、拡張と収縮を繰り返します。

それによって受精卵を取り囲んでいる透明帯に自ら裂け目を作り、
その後さらに拡張を続けることで透明帯から完全に脱出します。
これを孵化と呼びます。
孵化することで、受精卵は子宮に着床出来るようになります。

透明帯は卵子を包む透明なタンパク質の層であり、透明帯の役割としては、

・受精時に精子が卵子内に侵入すると透明帯を構成するタンパク質が変性し、
 硬くなることで多精子受精(精子が複数個卵子に入ることで起こる異常受精)を防止する

・受精後1〜3日目の受精卵(初期胚:胚盤胞になる前の段階)は、
 細胞同士の結合が弱くバラバラになりやすいので、
 1つ1つの細胞(割球)がバラバラにならないようにまとめる

・卵管で受精した受精卵が着床の場である子宮まで移動する際に、
 卵管の壁への着床してしまう子宮外妊娠を防止する

などが上げられます。

着床時には透明帯は不要になりますが、それまでの間には大切な役割があります。

受精卵の状態は良いにも関わらず、孵化出来なかったために着床が成立しないこともあります。
その原因として、女性の加齢や受精卵の凍結・融解によって起きると言われている透明帯の硬化が考えられます。

そこで、受精卵に対し人工的に透明帯に穴を開けて孵化しやすくすることを「アシステッドハッチング(AHA)」と言います。

AHA(アハ)には、細い針を用いて透明帯に切り込みを入れる方法、
レーザーを当てて透明帯の一部を蒸散して穴を開ける方法、
透明帯に強酸を吹きかけて透明帯を溶かす方法があります。

胚移植の当日に、凍結受精卵を融解してAHAを行うことで孵化を助け、
移植した受精卵が子宮に着床しやすくする、とても有効的な方法となっております。

何かご不明な点がございましたら、スタッフまでお声かけください。


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6月のラボ便り

2023年06月14日 | ラボ便り
6月のラボ便り

皆様、こんにちは。

梅雨の季節となり、気温変動が激しい時期となりました。
体調に気をつけて、これから来る夏の暑さに備えましょう

今回のラボ便りでは、
「精液の適切な持参方法」についてお話させていただきます。

精子は非常にデリケートで温度変化に弱い細胞であり、
いかに適切な温度を維持してお持ちいただくかが重要です。

精子は温度が高すぎると活性化し、
エネルギーを消費することで運動率が低下してしまったり、
精液中の細菌が増殖することで死滅する恐れがあります。

ですので、射出前の精子が貯蔵されている陰嚢は、
体温よりも低い34〜35℃になっています。
また、精子は温度が低すぎても運動率・生存率が低下してしまいます。

精液を持参される際は以下の点にお気をつけ下さい。

・夏場で気温が高い時
採精容器に直射日光が当たらないようにし、
冷房の風が直接当たらないようタオルなどに包み保冷バッグに入れる。
(※保冷剤は温度が下がりすぎてしまうため使わないで下さい。)

・冬場で気温が低い時
採精容器をタオルに包むだけでは精液が冷えてしまうので、
口の広いスープジャーなどの保温容器に採精容器ごと入れて保温する。
もしくは採精容器を肌に近い場所に入れ持ち運ぶ。

季節関係なく、かばんの中にいれてご持参される場合に、
採精容器が転倒していてフタ部分に精液が付着してしまう恐れがあります。
そうしますと全ての精液を回収することが困難になってしまい、
治療に使用できる精液量が少なくなってしまいます。

ご持参の際にはなるべく、採精容器をたてた状態で、
容器が転倒しないようご注意ください。

また、採精容器はプラスチック製ですので、
強い衝撃が加わると割れて精液が漏れる恐れがありますので、お気をつけ下さい。

妊娠には、精子の質も重要です。
質のより良い精子を治療に用いていく為にも、
精液をご持参される際は適切な方法でお持ちいただくようお願い致します。

何かご不明な点がございましたら、
スタッフまでお声掛け下さい。


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5月のラボ便り

2023年05月08日 | ラボ便り
5月のラボ便り

皆様、こんにちは。
さわやかな風に、暖かい日差しを感じられる季節になりました。

今回のラボ便りでは、「受精卵の凍結」についてお話させて頂きます。

凍結方法には「超急速ガラス化凍結法」と「緩慢凍結法」の2種類があります。

「超急速ガラス化凍結法」は、
受精卵や卵子の細胞内液を凍結保護剤に置き換え、
急速に-196℃へ下げることで細胞内に氷晶を作らず凍結する方法です。
細胞内に氷晶が出来ると、細胞に負担がかかり壊れてしまうことがありますが、
超急速ガラス化凍結法はそれを防ぐことが出来ます。

「緩慢凍結法」は、凍結保護剤を受精卵や卵子に添加し、
プログラムフリーザー中で徐々に温度を下げ、凍結する方法です。
緩慢凍結法ですと、細胞内外に氷晶が出来やすいため、細胞へのダメージが大きいです。

そのため、現在の日本では受精卵や卵子の凍結には超急速ガラス化凍結法が広く行われています。

受精卵を凍結するメリットとしては、
患者さんの身体的、精神的、金銭的な負担が軽減されることがあげられます。
1回の採卵で採れる卵子は1つとは限りません。
1回の採卵で複数個の受精卵を得ることも可能です。
その周期に胚移植を行わなかった受精卵を凍結保存しておき、
次周期は採卵をせず、胚移植から治療を始めることが出来ます。

また、凍結保存を行った受精卵は、凍結期間が長くなっても、受精卵の質は落ちません。
ですので、先に採卵して受精卵を凍結保存しておき、
仕事などの予定に合わせて数ヶ月から数年後に妊娠を目指し、
胚移植を行うことが可能です。
( ↑ 保険での体外受精・顕微授精では、胚を戻す為の採卵手術ですので、
個人の希望で貯卵する事は出来ません。
保険診療下におきましては、採卵手術をしたら、医師の判断のもと胚を戻して参ります。)

さらに、お2人目以降のご妊娠を考えられている場合は、
お一人目の治療の移植において使わなかった凍結受精卵をそのまま保存しておき、
数年後に再度胚移植をすることが出来ます。

何かご不明な点がございましたら、スタッフまでお声かけください。
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4月のラボ便り その3

2023年04月26日 | ラボ便り

本日は、4月のラボ便りの続き「その3」を書かせて頂きます。

③体外受精・顕微授精(高度生殖医療)
体外へ卵子を取り出し(採卵)、男性の精子と出会わせて受精を促します。
受精の方法には体外受精と顕微授精の2つがあります。

※体外受精について詳しくは2023年1月、
顕微授精について詳しくは2022年12月のラボ便りをご覧下さい。

受精した卵は、
数日間、インキュベーターという女性の子宮内と同じ環境に維持された機械の中で培養されます。

そして、しっかりと成長した卵を子宮内へと戻します(胚移植)。

タイミング治療から人工授精へ、人工授精から体外受精へ、
と治療方法を妊娠率が高い上の段階へと変えていくことを、ステップアップと言います。

それぞれの治療方法を何回行ってステップアップをするかは、
その患者さんのお体の状態や方針によって異なります。

不妊治療は、タイミング療法・一部の検査以外の治療は、
保険診療で行えず自費診療でしたが、
昨年4月より人工授精、体外受精・顕微授精も保険診療で行えるようになりました。
(※ただし、行える診療の範囲に限りがあります)

コスト面において不妊治療をスタートしやすく、
また、治療方法の選択もしやすくなったと思います。

なかなか妊娠しないな、、と悩まれている方は、
まず検査をされてみたり、現在治療中の方はステップアップを視野に入れてみてはいかがでしょうか。

何かご不明な点等ございましたら、スタッフへご相談下さい。
スタッフ一同、皆様のご妊娠に向けて全力で取り組んで参ります。
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4月のラボ便り その2

2023年04月24日 | ラボ便り

4月のラボ便り

前回は、不妊治療を開始する前または不妊治療と並行して行っていく検査について書かせて頂きました。
卵巣年齢や卵巣の状態、お受け頂きました検査結果を踏まえ、
不妊治療のステップアップについても考えて参ります。

以下、そちらのご説明をさせて頂きますね。

不妊治療の方法には、大きく分けて3つあります。

①タイミング療法
排卵日を診察によって予測し、排卵日周辺に夫婦生活を持って頂く方法です。
実際に卵巣・子宮の状態を超音波エコーで診て排卵日を予測する為、
ご自身でアプリや排卵検査薬などを用いて予測するよりも精度が高いです。
また、卵胞の発育を良くし、妊娠率を高める為の排卵誘発剤(内服薬やお注射)を使うことも出来ます。

②人工授精
良好精子を子宮内へ直接注入する方法です。
タイミング療法と同様に診察によって排卵日を予測し、排卵前に人工授精を行います。
※人工授精について詳しくは2023年2月のラボ便りをご覧下さい。

体外受精・顕微授精に関しましては、次回ご説明させて頂きますね。

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4月のラボ便り その1

2023年04月21日 | ラボ便り
4月のラボ便り

皆様、こんにちは。

桜がきれいに咲いて、4月から新年度が始まりましたね。
また気持ちを新たに、お一人でも多くの患者さんがご妊娠されますよう全力で尽くして参ります!

今回のラボ便りでは、不妊治療は実際に何を行うのかについてお話しします。

まず、妊娠が成立しない原因を様々な検査を行なって調べていきます。

検査には以下のようなものがあります。
*女性
経膣超音波検査、ホルモン血液検査、AMH検査、精子不動化抗体検査、子宮卵管造影検査など
*男性
精液検査、ホルモン血液検査、睾丸診察など

しかし、これらの検査を行っても特別な原因が見つからずご妊娠されない(原因不明不妊)方も多くいらっしゃいます。
ですので、当院では全ての検査を行なってから治療をスタートするのではなく、
検査をしながら並行して妊娠を目指していく方針をとっております。

次回は、治療の方法についてご説明させて頂きますね。

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