大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・タキさんの押しつけ劇評『チンチン電車と女学生』

2014-06-23 10:52:19 | 評論
タキさんの押しつけ劇評
『チンチン電車と女学生』



 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が身内に流している劇評ですが、もったいないので転載したものです。


映画ではありません。大阪の劇団・往来の舞台です。

 ベースは戦時下の実話、男達が次々徴兵される中、広島電鉄の車掌(後に運転手)の役目を担うべく、一日の半分を女学校、残り半分を勤労に当てる目的で集められた少女達の物語。
 今日が最終日だったので、しばらく再演は無いと思いますが、もし、今後“劇団往来/チンチン電車~”と見かけたら、絶対観劇にお出かけ下さい。おわかりの通り、反戦芝居ではありますが、一切の政治・イデオロギーを超えて、普遍的な、極自然な人間模様を描いた芝居です。
 私、演出の鈴木氏が「若いキャストが戦時下の様子が解らず、今一、リアルにならない」なんぞとこぼすもんで、うちの店で飲みながらウーダラカーダラ喋っておりましたら「今のそれをみんなの前で喋ってくれ」との無茶振り。「アホか」と言いつつ、結局、ウダウダみんなの前で喋ったのが公演の一週間前、そんな縁で本日ようやく見てまいりました。

 2幕 全19場、途中インターミッションを挟んで3時間弱の音楽芝居(ミュージカルとは違います)
感想一言で見事。私のウダウダ講演なんぞ全く必要なかったと、芝居を見ながら勝手に赤面していました。みんな、戦時下の若い男女として、厳然として舞台上に顕在し……こんなもん、公演一週間前にちょっと話を聞いたから出来るものではありません。
 この芝居の初演は4年前、当時のメンバーが今回どの位残っているかは知りませんが、誠に見事な舞台でした。
 私、今回が初見でしたから、講演するについて脚本を読ませてもらいました。 本読みの段階で、すでにウルウル来る程、良く出来た台本でしたが、舞台はさらに上を行きました。 予め本読みしていましたから耐えられましたが、これがなんの予備知識なしに見ていたら、冒頭一曲目の歌でボロボロに泣いていたはずです。事実、私の周りのお客さんは、その一曲目でハートを鷲掴みにされていました。
 なんのストーリーも始まっていない、まさに冒頭の一曲目です。歌う彼女たちの内実が現れていなければあり得る反応ではありません。これはある種の奇跡であります。
 講演させてもらった縁で打ち上げにも参加、キャスト以外の人達と話しましたが、皆さん同じ感想でした。芝居は“ナマモノ”ですから、一回一回出来は違います。公演最終回とあって、最高の舞台に立ち会ったのかもしれません。それはそれで、得難い経験をしたと思います。戦時下の若者たちの苦悩と、厳しいながらに抱く希望。国の情勢は日増しに落ち込んでいく日常、それでも懸命に前を向いて生きぬこうとする姿は問答無用に感動的です。

 そんな日常、昭和20年8月6日 午前8時15分……セミの声がうるさい、良く晴れた広島の青空に、いきなり、もう一つの太陽が現れるのです。
 人々のいかなる想いも営みも……一発の原爆で蒸発し、吹き飛んでしまう。
 絵空事ではなく、その現実が舞台上に再現されていました。
 私達日本人は、未だに先次大戦を総括していません。総括したからええっちゅうもんでもありませんが、例えばアメリカなんぞは勝った立場で実に都合の良い総括をしています。しかし、今の日本人のように思考停止しているのは論外です。物事を相対化するつもりはありませんが、“絶対的評価”なんぞ有る訳も無く、時代の要請、民族としての要請その他、時と立場で結論は違うでしょう。しかし、この事を考え続ける姿勢は持ち続けるべきだと思います。
 偉そうにブッとりますが、私だって人様に言えた義理ではありません。そんな自分の無様を思い知らされる芝居でも有りました。 本作、中心は広島電鉄の作った女学校に通いながら働く少女たちの日常がメインではありますが、その家族、学校の先生たち、市井の人々、これら総てが世界を形作っています。今回、ヒロインの淡い恋心を向けられる兵士の役を演じる加藤義宗(加藤健一の息子さん)が、オーバーに叫ぶ事なく、かつ、全くブレない演技で好感。父ちゃんに似ず、顔が小さく、足の長い今時の若者。おおよそ戦時下の日本男児にはあるまじきスタイルながら、そんな事は全く感じない。それを言い出せば女の子たちもみんな今時の可愛い女性たちながら、戦時下の少女以外に見えない。
 久方振りに「下手の横好き」の芝居心をくすぐられました。もし、可能なら、戦時下 物資横流しで儲けるオッサン(そんな役は登場しない)の役ででも参加したいものであります。 現実、そんな贅沢な時間の持ち合わせは有馬線が、その前に瞬殺で演出・鈴木氏に拒否されるでしょう。 キャスト70人(ワオ!!!)スタッフ合わせて100人以上の大所帯、スポンサーが付かなければなかなか再演は難しいでしょう。これまで大阪と広島だけでの公演ですが、心から日本中で見て欲しい作品です。どなたかスポンサーに心当たりがおありでしたら、紹介してあげて下さい。



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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『300Ⅱ』

2014-06-23 10:38:07 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『300Ⅱ』



 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


早朝 1回目上映だったせいもあるだろうが、正直眠たい。

 全く人間がいない。ほぼ全体CG画面なのは前作と一緒なのだけど、今作は、「ああ、CGや」という風に見えてしまう。
 前作は、フランク・ミューラーのグラフィック・ノベル(要するに漫画)を映画化するスタイルなので、よりCG合成を意識して良さそうなのだけど(実際そう思ったけど)、現実には今作の方がしらける位CGアニメに見えてしまう。
 今作には、ミューラーの原画がなく、構想(後に脚本になる)のみがあり、モデルが無かったので画面は完全に映画のオリジナル。 前作は原画の決定的シーンを忠実に切り取ってあったのだが、それが何らかの化学変化を受けてリアルに歴史(神話とも言える)を見せていた。この場合の化学変化とは、役者の成りきりと人物が丁寧に描かれていた事に拠るものです。

 前作テルモピュライの100万対300の戦いは多分に神話的要素が強いのですが、本作に描かれるテルモピュライに先立つ事10年前のマラトンの戦い(第1回ギリシャ対ペルシャの戦い、ギリシャ側の勝利に終わり、戦勝報告を兵士が走ってアテネに届けた。このマラトン~アテネ間の距離が42.195㎞で、現代のマラソンの起源に成っている)とテルモピュライと同時期にあったサラミスの海戦を描いています。ヘロドトスの「歴史」にも描かれ、人物の背景も解説されている。ギリシャの将軍テミストクレスも、元はギリシャ人でありながらペルシャ艦隊の一翼に属するアルテミシアも、勿論クセルクセス王も実在の人物である(マラトンの指揮官は別な将軍だったが、本作ではテミストクレスになっている) 」
 テミストクレスは貧しい家から這い上がるようにして市民政治家になった人で、スパルタのレオニダス王のような専制君主ではない。彼は、いかに動くかを市民議会の決定に委ねざるを得ない。ここにテミストクレスの苦悩とドラマが在るはずなのですが、映画は非戦・開戦の対立をちらっと見せるだけで踏み込まない。テミストクレスの周囲の人物にも説明がない。 だからギリシャ側の人間が誰一人浮かび上がってこない。
 逆にアルテミシアは、非常に勇猛な女性であったようだが、本作ではまるで魔女で、クセルクセスは彼女の操り人形のように描かれている。
 ドラマの深度が浅くなっているばかりか、クセルクセスの人物像までが浅はかになってしまっている。画面はスプラッタホラーかと思わせる程 血みどろではあるが、人物が見えにくい為、まるでゾンビ対ゾンビの殺し合いの雰囲気、感情移入する対象が存在しない。
 歴史とはいえ、紀元前480年のお話、半分神話の世界ではあるので、映画的脚色も許せるとは思うけど、もう少し人間を描くべきだった。 画面にも“??”と思わせるシーンがたびたび有って、後進の指示が出ているのに櫂が全く動いていなかったりするのは興醒め。
 海戦のシーンにしても、この繰船で、どうやって敵のド#☆◆○に突っ込めるのか解らない。どうせCGならもっとスマートに見せられる筈である。
 てな訳で、迫力の映像ではあるが真価を発揮出来ていないと見える。“ノア”にも共通の問題で、ドラマのどこに重点を置くのか……最重要視点は一つに絞り込んでおかないと、散漫な印象の作品になってしまう。
 これらの問題が脚本にあるのか編集にあるのかは不明ながら、現実にグラフィック・ノベルが無いのだから罪の有りどころとしては半々ですかね。
 フランク・ミューラーは現在のヒーローコミック映画全盛の立役者ですから、年がら年中製作現場に呼ばれるらしい。その為、本業のイラスト・ストーリーがお留守になるらしい、痛し痒しですね。本作の為には、イラスト原作があった方が良かったと思います



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